2011年05月11日

review:TRANS COMPLEX -情報技術時代の絵画- 彦坂敏昭、村山悟郎《4/9、4/28》

review:TRANS COMPLEX -情報技術時代の絵画- 彦坂敏昭、村山悟郎《4/9、4/28》

TRANS COMPLEX -情報技術時代の絵画- 彦坂敏昭村山悟郎
AISHO MIURA ARTS
東京都新宿区住吉町10-10
03-6807-9987
4/9(土)〜5/14(土)日月祝休
12:00〜19:00
彦坂敏昭村山悟郎110409.jpg

TRANS COMPLEX - The painting in the Age of Information Technology - Toshiaki Hikosaka, Goro Murayama
AISHO MIURA ARTS
10-10,Sumiyoshi-cho,Shinjuku-ku,Tokyo
03-6807-9987
4/9(Sat)-5/14(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google translate



京都芸術センターでまず行われ、続いて東京に場所を移して開催の企画。印象として近いスタンスを持つ2人のアーティストをフィーチャーし、空間に提示される互いのクリエイションに備わる独自の視点のユニークさが興味深く思えます。
京都での展示も拝見していますが、もとい観たというよりは充分に時間をかけることが叶わず足を運んだだけといった感じではあるのですが、その短い対峙時間で得た印象としては、それぞれ異なる空間で展示が行われ、互いのクリエイティビティの交流の成果の提示というよりもややアーカイブ的な構成に思えたのですが、今回はひとつの空間に彦坂さんと村山さんの作品が共存し、いわゆる共作ではないものの、空間を共有していることで表出する緊張感や互いの個性の方向性などもよりクリアに提示されているように思えて興味深いです。

1階にはほぼ同じサイズの平面作品、村山さんはひとつの額のなかにふたつのオンペーパーのタブローが並べて収められています。
同じストロークを連ねてリズミカルな構成が展開され、並ぶパターンに共有する構造がそれぞれの筆の動きの差異をむしろ生々しく提示していて、ここで行われたことの「身体的な動き」への想像が強くもたらされる用に思えます。


村山悟郎_19.JPG 村山悟郎_18.JPG 村山悟郎_17.JPG 村山悟郎_16.JPG

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一方、彦坂さんはふたつの額にそれぞれのタブローを収めて展示。お馴染みのストロークによる作品で、それぞれの支持体の色味の違いによってそこに乗せる色彩や質感を変えて展開されていて、白い支持体のものはどこか突き抜けたような空間性が思い起こされるものの、抽象性の高さからかむしろ世界観の極端な違いが感じられないのが隣の村山さんの展開とも相まって面白く思えます。


彦坂敏昭_21.JPG 彦坂敏昭_20.JPG 彦坂敏昭_19.JPG 彦坂敏昭_18.JPG

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2階ではそれぞれ独自のシリーズが展開されていきます。

村山さんはまず何やら細かくカラフルな線が交錯する図を掲示、駅名が縦軸にずらりと並び、どんな法則性かは失念してしまったのですがある法則に従ってさまざまな線がその方眼のなかでパターンとなって展開されて、混沌としていながらもリズミカルなイメージが届けられます。この図像の提示が階下の作品でのパターンの展開にも関連しているようにも思えて興味深さも増していきます。


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この階には壁に直接描かれた作品が。
といっても村山さんは鉛筆でうねるような有機的な曲線を描くのみで、そこにまた別のアーティストにトライアングルを組み込むようにしながら色の付いた線を重ねて入れてもらう、というユニークな展開が行われています。先の小さな図での線の交錯が元となっているような感じも伝わり、そこに有機的な感覚が強く注がれることでゆらめくような気配も導き出されているように思えます。


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線を重ねた方の名前もクレジットされていてそれぞれ異なるのですが、ある具体的なルールがそこにあるせいか、そこに色の付いた線の描き手の個性が強く提示されることはなく、しかししっかりとバリエーションが導き出されていることがまず興味深く思えます。
また村山さんの立体の作品ともイメージのなかで繋がっていきます。立体作品ではやはりその素材感や、三次元で輪郭も強く提示されることで相当なインパクトも創出され、一方でこちらはむしろ儚い感じ、自身の気配をなるべく抑えて空間への作用も弱めつつ、また他の人の手も加わることでなお「個」の存在が希薄になっているのですが、逆にそのことで「像」の本質的なイメージが高い純度で抽出されているようにも感じられます。大胆にピーリングしていってその骨組みの部分だけが現れているような印象も浮かんできた次第です。


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彦坂さんもまたストイックな展開を繰り広げていきます。
まず展示されているのが、ひとつの画面にひたすら方眼を描き込んだ作品、文字通りの「方眼を描く」という行為が提示され、そこに滲み出る手描きによる歪みが協調されています。


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モノクロームで統一されたタブロー群。


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さまざまな素材を用い、それぞれの質感を重ねて独特のテクスチャーを画面に展開していくお馴染みの質感。当初は家や地図などを元にそれを分解、再構築するような展開だったのが、今回は相当に抽象性が高く、そこから得られる縮尺のイメージもむしろ曖昧でぼんやりとしていて、しかし色調の硬質さ、クールさによって不思議な気配が導き出されているように思えます。


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新たな展開として、さまざまなかたちにちぎられたような紙に方眼を描いてそれらをひとつの画面に凝縮したコラージュ的なアプローチの作品も。
こちらも手描きの方眼の、行為の無機質さによってむしろ有機性が強められ、行為の生々しさを強く提示しているように思えます。


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イメージの元となったと思われる小さな画面のもの、こちらがなかなか興味深いです。
ある計算式によって創出されるシャープな混沌、緻密なドットの羅列が複雑な構造を構築し、異様なほどに硬質なクールネスがそこから漂ってきます。これまで拝見してきた彦坂さんの作品に一貫して備わる無機質な感触に通じる要素がこの小さな画面に抽出されているような感触もあり、手描きでないことのある意味の難しさがあるものの、この展開もしっかりと観てみたい気がします。


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彦坂敏昭_04.JPG 彦坂敏昭_03.JPG

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それぞれのクリエイションにおける有機性と幾何学性のバランスが、ひとつの空間に収められることで際立ち、互いに差異はあるもののそこに観る側にとってひとつの展示としての一貫して共有されるイメージがあるように感じられるのが興味深いです。
おそらくは今回でこの企画はひとまずは完結、ということになるのかとは思われるのですが、もう少しこの続きを観たい、彦坂さんと村山さんのクリエイションの本格的な交錯にも接してみたい、という好奇心も湧いてきます。


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posted by makuuchi at 07:53| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:小野さおり展「ギフト」《4/9、4/14》

review:小野さおり展「ギフト」《4/9、4/14》

小野さおり展「ギフト」
GALLERY MoMo Ryogoku
東京都墨田区亀沢1-7-15
03-3621-6813
4/9(土)〜5/14(土)日月祝休
11:00〜19:00
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Saori Ono "GIFT"
GALLERY MoMo Ryogoku
1-7-15,Kamezawa,Sumida-ku,Tokyo
03-3621-6813
4/9(Sat)-5/14(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google translate



ぱっと目にしたときにその「色」で自身の世界へと誘ってくれるような、代名詞のような色彩を持つクリエイション。六本木のスペースで初めて小野さおりさんの個展を拝見したときも、その青とも緑とも言えそうな独特の深くて暗い、しっとりと落ち着いた色彩の印象が強く残っています。
以降同時期に受賞し話題をさらった群馬青年ビエンナーレとシェル美術賞を経て、場所をリニューアルした両国のスペースでに移して開催されている今回の個展。オリジナリティを感じさせるその色彩はもちろん、ぼんやりと膨らむように滲む輪郭の風合いを程よく保たせながら、そこにさまざまなアプローチにおいて豊かな緩急が持ち込まれ、やさしくやわらかな重厚さをその世界観に纏わせて独特の気配が展開されているような感じです。


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それぞれのモチーフの稜線が奏でるまろやかな輪郭はどこかユーモラスで、またその線自体も丸みを帯びていて、じんわりと何とも言えないテイストがそれによって醸し出されているようにも思えます。
そして何より透明のガラスの描写の巧みさに唸らされます。被せられるガラスの蓋、ドーム状のかたちの安定した美しさがていねいに表現されて、なかに収まる海産物や鉱物のかたちもしっかりと見せながら、そこにひとつの層が存在していることもしっかりと、しかし自然に認識させてくれて、相当にふわふわとしていて奇妙なシチュエーションでありながらもそこに横たわる説得力は強固でファットに感じられます。


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もりもりと、わさっと盛られる海産物。もわもわとたゆたうような風合いがそこかしこから感じ取れ、盛られる器自体もまるで水の中に沈められているような不思議なイメージが届けられます。
そこにさらに背景となる部分に細い線描でさまざまな草花の紋様が描き込まれて、その繊細な風合いが、画面の中央に鎮座する器に盛られガラスの蓋が被せられた海産物のどっしりとした存在感を際立たせています。


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画面の多くに広がる独特の深い色調。そのなかにさまざまな色彩が散りばめられているのも楽しいです。それぞれの色彩は深い青緑との決定的な境界がなくて、晴れた夕刻の空の青空と夕暮れとが同じ瞬間の空に共存しているときに感じる不思議な感覚が随所から届けられます。
そのむしろストイックに意図的な「曖昧さ」が描かれる情景にやさしくまろやかな風合いをもたらしているようにも思えます。


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イソギンチャクのような有機的なモチーフをシンプルに描く作品も。水の中深くでゆらゆらと漂う感じが伸びる触手の絡まりから感じ取れます。


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珊瑚や鉱物といった硬質なモチーフを描く作品。被せられる蓋が描かれないことで、シチュエーション自体もよりシンプルに表され、モチーフのユニークさがクールに提示されます。そしてその輪郭が例によって丸みを帯びたまろやかな稜線で描写され、さらに鉱物を彷彿させる部分は線同士が微妙に離れていてコミカルな風合いがそのシャープなかたちにもたらされて、何とも味わい深い気配が紡がれます。そこからこの世界を紡ぐこと自体における不思議なスタンスが顔を覗かせているようにも思えます。


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人物が登場する作品は、世界観のシュールさがさらに強烈に醸し出されます。
くりっとした目の輝きがなんともかわいらしく、またどこか感情が抑え込まれ、押し殺されたような感じも伝わり、別の生物とのハイブリッドとなっている様子も奇妙なイメージを色濃くしていきます。


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どこからかにゅうっと腕が伸びてガラスの蓋の内側に現れている作品、まるで毛糸のセーターの表面のようなリズミカルな緑の線の密集のもわもわとした感じも何とも印象深く、また指先の細身の線の繊細さも引き立てます。


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小さな画面のシンプルな構図も楽しい静けさとなって小気味よく迫ってきます。
モチーフのかわいらしさが小さな画面によって引き立ちます。


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多くの作品で独特の青緑の色調が用いられていることもあり、赤紫系統の色調で纏められた大小2点の作品はその味わいの差異が実に興味深く思えます。
しっとりと沈むような深みを感じさせてくれる青緑の色調と比べていっそう艶かしくスリリングなイメージが届けられるような印象で、またこの色彩での展開も楽しみになってきます。


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バラエティに富む線の表情やメインの色調のなかに収まるさまざまな色彩、微妙にぼやかされる輪郭が独特の緩さをその世界にもたらし、得難い心地よさを持ち合わせる不思議なイメージとなって届けられます。
そして、作品それぞれの画面の仕上がりの美しさにもおおいに感じ入ります。すうっと染み渡るように広がっていく色や質感は、画面のフラットさによってその風合いが失われることなく観る者に届けられ、それが描かれる世界へと意識をスムーズに誘ってくれるんです。


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posted by makuuchi at 05:45| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月10日

review:佐藤亮太『who is it wears the mask』《4/2》

review:佐藤亮太『who is it wears the mask』《4/2》

佐藤亮太『who is it wears the mask』
アルマスGALLERY
東京都江東区深川2-2-3
03-6412-8210
3/19(土)〜4/2(土)月休
12:00〜19:00
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Ryota Sato "who is it wears the mask"
HARMAS GALLERY
2-2-3,Fukagawa,Koto-ku,Tokyo
03-6412-8210
3/19(Sat)-4/2(Sat) closed on Monday
12:00-19:00
Google translate



ひとつの画面に交錯するさまざまな線。
複数の層が硬質でアグレッシブな空間をそのなかに導き出し、シャープで動的なインパクトに溢れる世界が展開されます。


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画面側面に垂れる絵の具の痕跡が下地の生々しさを表し、その「もの」としての濃厚な風合いを強くて維持しているようにも思えます。その下地にひたすらに重ねられるさまざまな線や色面。全像は混沌としていて危うささえ思い起こされますが、至近で眺めていくとそのひとつひとつは逆にエッジが立つ鮮烈さと鋭さを持ち合わせていることに気付かされ、そこからこの硬質な世界へと一気に誘われていきます。


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さまざまなかたちでの展示が空間にもリズムを生み、それが展開される世界観にも作用していっそうホットでクールな雰囲気となって包み込んできます。線の上に重ねられる色面によって、その線の輪郭のみが色面のなかから浮かび上がる様子など、画面上に構築される細微な立体感にも魅せられます。


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色彩のチョイスのバリエーションも、それぞれの作品に独特の味わいをもたらします。
個人的には薄い色面にくっきりとした線が展開される作品がその世界のクールさをもっとも鮮やかに引き出しているように感じられた次第。シャープな線の輪郭がさまざまな色彩で描き出され、生み出される表情は混沌としていながらもむしろそこに洗練された風合いすら感じられ、そのクールさに引き込まれます。


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大判の作品ではシルバーが大胆に用いられ、ひときわ硬質な雰囲気が導き出されていた次第。最も手前の表層に広がる金属的な光沢がさまざまな表情を覆い隠し、アバンギャルドなブリリアントさの奥底に魑魅魍魎としたシャープな混沌が蠢いているようなイメージが興味深く思えます。


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線の鋭さ、鮮やかさはむしろ無機的なほどでありながら、重なる色やかたちなどには感覚的な有機性が溢れ、それがこの世界の独創性へと昇華しているような印象です。
さまざまな実験がそれぞれの作品で繰り広げられているような感じもあり、そこからの発見でさらに整理されコントロールされた混沌が生み出されるとしたら、そのクールネスは尋常でないはず、という期待感も高まります。


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posted by makuuchi at 08:43| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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