2011年05月15日

review:田中麻記子「 Colour Spell 」《4/28》

review:田中麻記子「 Colour Spell 」《4/28》

田中麻記子「 Colour Spell 」
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-1-15 CHビルB1F
03-3797-1507
4/26(火)〜5/17(火)月休
11:00〜20:00
田中麻記子110426.jpeg

Makiko Tanaka " Colour Spell "
hpgrp GALLERY Tokyo
5-1-15-B1F,Jingumae,Shibuya-ku,Tokyo
03-3797-1507
4/26(Tue)-5/17(Tue) closed on Monday
11:00-20:00
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祝祭の絵画。
ほぼアニュアルで開催されている田中麻記子さんの個展、その度に新たな試みが行われていてもとよりの濃厚な世界が徐々に広げられているような印象を受けるのですが、前回のパステルによるふわりとやさしい膨らみが感じられる世界観から、今回は支持体に木製パネルを採用し、そこに直に描くことでまたこれまでとひと味違う風合いが生み出され、また描かれる場面の賑やかさ、いつも以上に多彩なモチーフがひとつの画面に描き込まれ、その情景にどこかその世界の日常的な雰囲気が漂って、そしてそれがプリミティブな祝祭の気配も醸し出しているように感じられるのが印象的です。

メインスペースに展示されているキャンバス作品はこの1点のみ.
この作品の存在が効いていて、パネルに描かれた作品のテイストの斬新さを際立たせているように思えます。


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入り口に沿った壁面に展示され小品2点。叫ぶ猫の被り物のようなものが登場し、またコンパクトな画面にひとつの場面がシンプルに描かれてそこに独特の濃厚で危うげな気配が凝縮され、加えてパネルの木目による粗いテクスチャーがどこか乾いた殺伐とした空気感をそこにもたらします。
ちいさな作品がすこし高い位置にきゅっと並べて展示されて、そのケレン味のないシンプルなインスタレーションが広い壁面にも作品の雰囲気をしっかりと作用させています。


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広めのパネルの作品が続いて並びます。
ほぼ2点1組の構成でそれぞれ寄り添うようにして展示された作品たちには、ひとつの画面に数多くのモチーフが登場し、田中さんらしい濃く深く、華やいでいて、そしてどこか妖しさも潜む幻想的な世界が力強く、また軽やかに展開されています。


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初めて油彩の作品を拝見したときに感じたダイナミズムは程よく抑えられ、ほぼ統一され極端な差異のない縮尺のモチーフでひとつの画面が展開されていることで、どこかいつもよりも落ち着いた、何故かしら身近な雰囲気が届けられます。


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ひとつひとつの登場人物たちの仕草はしかしユーモラスだったりシュールだったりして、それが明るく楽しげな雰囲気となって画面の情景を満たします。どこか宗教的な風合いも程よく織り込みながら綴られる日常的な「ハレ」の世界。遠くに横たわる地平線の穏やかなスケール感もおおらかな雰囲気へと作用して、いつものように独特の色彩感による濃厚さを備えつつもどこかふわりと軽やかでほっとするような印象が広がっていくように感じられます。


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緑がおおらかに広がる作品、すうっと滲むような色彩の広がりがスリリングな感触を生み、奥行きのスケール感がポジティブな雰囲気となっておおらかに迫ってきます。流れる空のダイナミックさ、その流れに沿ってシルエットを揺らす大きな木々の不思議な蠢きなども、明るい高揚を届けてくれます。


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スクエアの画面の作品では、長い画面と比較してぐっと力強く引き込むような迫力を伴う世界が展開され、ダイナミックな情景に呑まれるような感覚に満たされます。幻想的な気配もやや強めの印象、物語性の大胆さもこれまでの田中さんのダークな世界観との関わりがひときわ強く引き継がれ、そこに澄んだ風合いがもたらされているような印象です、


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さらに強い印象を残すのが、画面前面に赤系統の色彩が広がる2点の作品。
赤、という直接的に艶かしさを奏でる色彩は田中さんが紡ぐ女性的な世界と相性がよく、その華やいだ祝祭の気配もひときわ賑々しく奏でられているように感じられます。刹那的なストロークはパネルの木目に染み込んでそこに鋭さも加わって、スリリングな高揚を煽ってきます。


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パネルに直に描かれることが、浮かんだイメージを瞬発的に画面におこしていく行為の臨場感をいっそう生々しく伝えます。湧くようにしてさまざまな情景がひとつの色調で連ねられ、どこか走馬灯のような儚げな雰囲気もそこに忍ばせながら、大人びていてかわいらしい独特の感触が充満し、華やかで賑々しい赤やピンクの色彩感がいっそうの妖しさと艶かしさとで麗らかに迫ってきます。


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スマートな展示構成も、ひときわ軽やかな雰囲気を空間に届けてくれています。全体を俯瞰したときの画面のなかの濃い色調と広い壁面の白とのコントラストの清々しさ、そしてその広い感じが画面の密度へと好奇心を自然に向けさせ、それぞれの祝祭感に溢れる世界へと意識を誘ってくれるのも楽しいです。


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posted by makuuchi at 05:59| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月14日

review:勝正光 mental nomad《4/28》

review:勝正光 mental nomad《4/28》

勝正光 mental nomad
island MEDIUM
東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 205
03-5812-4945
4/23(土)〜5/15(日)月火休
12:00〜19:00
勝正光110423.jpegMasamitsu Katsu "mental nomad"
island MEDIUM
6-11-14-205,Soto-Kanda,Chiyoda-ku,Tokyo
03-5812-4945
4/23(Sat)-5/15(Sun) closed on Monday and Tuesday
12:00-19:00
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ひたすら鉛筆のみで広い画面と対峙し、ただ塗りつぶすという行為を徹底して完遂していく勝正光さんのクリエイション。過剰なまでにストイックに展開される世界は、グラファイトの暗い光沢により重厚な静謐を漂わせながら、そこに異様なほどの熱を思い起こさせてくれます。

今回の個展では発表されている作品数こそ少ないものの、その勝さんのクリエイションのバラエティも提示されていて興味深く感じられる次第。空間に浮遊するように設置された小品では、スナップ的な画像が精緻に再現されていて、その小さな画面のなかに収まるさまざまな筆圧によるテクスチャーが単なるモチーフを描いた作品にとどめないユニークさを際立たせているように思えます。


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何気ないありきたりな場面は逆にその行為のアバンギャルドさをそこに色濃くもたらします。消しゴムも用いられて巧みに表情が付けていかれるその情景は、登場する人々のやさしい気配を感じさせてくれるのと同時に、もっと至近で凝視したときに気付かされる支持体の紙にもたらされる凹凸の生々しさ、グラデーションごとに異なる立体感にも感じ入ります。


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勝さんのメインとでも呼ぶべきクリエイション、もっとも自身の行為をシンプルに提示する、広い画面をひたすら塗りつぶす作品も。小品での具象性がいっしょに展示されることでこの作品に費やされる執念のようなものもより強く伝わってきます。鉛筆で圧力がかけられることで紙にたわみが生まれ、そのことが行為のある種の狂気性を際立たせるのとともに、それ自体の「もの」としての質感、平面でありつつもむしろ彫刻的な行為によって制作されているような感触も提示されているように思えます。


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さらに、黒い画面に筆圧を加えることでそのなかにモチーフを描き出す作品も。初めて勝さんの作品を拝見したのがスピーカーヘッドを同様の手法で描いたもので、鉛筆で紙をへこませるようなことは確かに小さい頃にやったことがあるので何となく懐かしいイメージも思い浮かべつつ、そのユニークさに唸らされたのですが、今回はスカーフをおそらくほぼ実物大で再現、しかも柄を筆圧で再現していくというアプローチで力強く表現されていて、本来の軽やかな質感とは裏腹に異様なほどの重厚さが醸し出されています。


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用いられる鉛筆や支持体の差異、さらにはストロークの緩急によってさまざまな表情が付けられていく展開は今回の展示でより前面に表出されている印象で、また空間的な余白が塗り込まれる鉛筆の黒の色面の重さを強調しているようにも感じ取れます。


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posted by makuuchi at 07:49| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月12日

review:東美貴子『Fragments of time』《4/16、4.21》

review:東美貴子『Fragments of time』《4/16、4.21》

東美貴子『Fragments of time』
アルマスGALLERY
東京都江東区深川2-2-3
03-6412-8210
4/16(土)〜4/30(土)月休(5/7、5/8、5/14、5/15開廊)
12:00〜19:00(5/8:〜17:00)
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Mikiko Azuma "Fragments of time"
HARMAS GALLERY
2-2-3,Fukagawa,Koto-ku,Tokyo
03-6412-8210
4/16(Sat)-4/30(Sat) closed on Monday (5/7, 5/8, 5/14 and 5/15 is open)
12:00-19:00
Google translate



ぼんやりと浮遊するような滲んだ輪郭のペインティングやテキストを織り込んだ展開などを自身の作品に取り入れ、その都度独特の気配を醸し出してきた東美貴子さん。ギャラリーショウの奥のスペースで開催された1週間の展示で発表された、紙をドット状のスクエアに細かく刻んで画面にコラージュ風には貼ってモチーフを表現する作品は、これまでのふわりとした気配から一変しシャープなテイストが創出されていて印象的でしたが、今回の個展ではそのドットの展開がさらに進化した作品群に加え、針で穴をあけてモチーフのの稜線を表現するものや点描の作品など、バラエティに富んだ手法に取り組まれていて、それぞれが生み出す細密表現の面白さに魅せられます。

もっともスタンダードと思われる手法、点描による作品。
律儀なほどに丁寧に、それぞれのモチーフが描き上げられていきます。行為としてもシンプルなだけあってコントロールもしっかりと効いていて、スムーズにその繊細な気配の表出がなされているようにも思えます。しっとりとした大人びた感触に加え、繊細で爽やかな雰囲気が程よく溢れていて心地よく感じられます。


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こちらは趣向が凝らされた展開がひときわユニークな作品。
支持体におそらく古びた洋書の4ページ相当にあたる1枚の紙が用いられ、そこに絵を貼り、さらに貼られていないページをその絵に被せて穴で輪郭をトレースしていく、というもの。行為としての無機的な感触が深遠さへと転化し、また表裏両面から開けられる穴がもたらす立体的な表情もそのアプローチのユニークさを際立たせます。


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穴による作品はさらに大きなモチーフへと。
捕らえられるモチーフの輪郭がシンプルに穴の羅列によって描き出され、支持体の紙の質感も相まって大きな画面でありながらもどこか軽やかな印象が届けられます。


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前回の1週間の個展で発表された細密コラージュによる作品は、その緻密さがさらに追求され、いっそう細やかで繊細な表現が紡ぎ出されています。入り口から向かって正面の壁面に横一列に並べて展示された4点の作品、黄色いドットを多く用いるシンプルな配色で統一され、広めの画面のほぼ中央にさまざまな縮尺のモチーフがドットのコラージュで表現され、インスタレーションのリズミカルな小気味よさも相まって、その面白さがスムーズに届けられます。


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刻まれるドットが小さくなったことに唸らされつつ、ただ小さくなっただけではなくそのひとつひとつのドットのかたちの精密さや配列の美しさにも惹かれます。
描き出されているモチーフはむしろ有機的な印象で、それが幾何学的にも思える構造で細やかに構築されていることにも引き込まれます。


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ふたつの色彩のドットによる、やや大きめのモチーフが表現された作品も。
ほぼ正方形のドットが全て同じ角度で配列されていることのスマートさがその緻密さや美しさをいっそうシャープに際立たせています。


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すこし懐かしくも思える、テキストをグラフィティ調に織り交ぜたちいさな作品もカウンター後方の壁面に。


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今回の個展ではひとつの画面にひとつの手法、というシンプルな構成によってそれぞれの作品が制作されていて、バラエティに富んだ展開が繰り広げられていながらも「緻密さ」ということで一貫していて、ひとりのアーティストのクリエイションとしての統一感はしっかりと保たれているように思えます。
そして今後、このさまざまな手法がひとつの画面に収められていくとしたら、またさらにユニークなテクスチャーが生まれるかも、という期待も膨らんでいきます。今後の展開も楽しみです。


東美貴子_01.JPG
posted by makuuchi at 06:26| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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