2011年05月14日

review:勝正光 mental nomad《4/28》

review:勝正光 mental nomad《4/28》

勝正光 mental nomad
island MEDIUM
東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 205
03-5812-4945
4/23(土)〜5/15(日)月火休
12:00〜19:00
勝正光110423.jpegMasamitsu Katsu "mental nomad"
island MEDIUM
6-11-14-205,Soto-Kanda,Chiyoda-ku,Tokyo
03-5812-4945
4/23(Sat)-5/15(Sun) closed on Monday and Tuesday
12:00-19:00
Google translate



ひたすら鉛筆のみで広い画面と対峙し、ただ塗りつぶすという行為を徹底して完遂していく勝正光さんのクリエイション。過剰なまでにストイックに展開される世界は、グラファイトの暗い光沢により重厚な静謐を漂わせながら、そこに異様なほどの熱を思い起こさせてくれます。

今回の個展では発表されている作品数こそ少ないものの、その勝さんのクリエイションのバラエティも提示されていて興味深く感じられる次第。空間に浮遊するように設置された小品では、スナップ的な画像が精緻に再現されていて、その小さな画面のなかに収まるさまざまな筆圧によるテクスチャーが単なるモチーフを描いた作品にとどめないユニークさを際立たせているように思えます。


勝正光_16.JPG



何気ないありきたりな場面は逆にその行為のアバンギャルドさをそこに色濃くもたらします。消しゴムも用いられて巧みに表情が付けていかれるその情景は、登場する人々のやさしい気配を感じさせてくれるのと同時に、もっと至近で凝視したときに気付かされる支持体の紙にもたらされる凹凸の生々しさ、グラデーションごとに異なる立体感にも感じ入ります。


勝正光_15.JPG 勝正光_14.JPG 勝正光_13.JPG

勝正光_12.JPG



勝さんのメインとでも呼ぶべきクリエイション、もっとも自身の行為をシンプルに提示する、広い画面をひたすら塗りつぶす作品も。小品での具象性がいっしょに展示されることでこの作品に費やされる執念のようなものもより強く伝わってきます。鉛筆で圧力がかけられることで紙にたわみが生まれ、そのことが行為のある種の狂気性を際立たせるのとともに、それ自体の「もの」としての質感、平面でありつつもむしろ彫刻的な行為によって制作されているような感触も提示されているように思えます。


勝正光_11.JPG 勝正光_10.JPG 勝正光_09.JPG 勝正光_08.JPG

勝正光_07.JPG



さらに、黒い画面に筆圧を加えることでそのなかにモチーフを描き出す作品も。初めて勝さんの作品を拝見したのがスピーカーヘッドを同様の手法で描いたもので、鉛筆で紙をへこませるようなことは確かに小さい頃にやったことがあるので何となく懐かしいイメージも思い浮かべつつ、そのユニークさに唸らされたのですが、今回はスカーフをおそらくほぼ実物大で再現、しかも柄を筆圧で再現していくというアプローチで力強く表現されていて、本来の軽やかな質感とは裏腹に異様なほどの重厚さが醸し出されています。


勝正光_06.JPG 勝正光_05.JPG 勝正光_04.JPG 勝正光_03.JPG

勝正光_02.JPG



用いられる鉛筆や支持体の差異、さらにはストロークの緩急によってさまざまな表情が付けられていく展開は今回の展示でより前面に表出されている印象で、また空間的な余白が塗り込まれる鉛筆の黒の色面の重さを強調しているようにも感じ取れます。


勝正光_01.JPG
posted by makuuchi at 07:49| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月12日

review:東美貴子『Fragments of time』《4/16、4.21》

review:東美貴子『Fragments of time』《4/16、4.21》

東美貴子『Fragments of time』
アルマスGALLERY
東京都江東区深川2-2-3
03-6412-8210
4/16(土)〜4/30(土)月休(5/7、5/8、5/14、5/15開廊)
12:00〜19:00(5/8:〜17:00)
東美貴子110416.jpg

Mikiko Azuma "Fragments of time"
HARMAS GALLERY
2-2-3,Fukagawa,Koto-ku,Tokyo
03-6412-8210
4/16(Sat)-4/30(Sat) closed on Monday (5/7, 5/8, 5/14 and 5/15 is open)
12:00-19:00
Google translate



ぼんやりと浮遊するような滲んだ輪郭のペインティングやテキストを織り込んだ展開などを自身の作品に取り入れ、その都度独特の気配を醸し出してきた東美貴子さん。ギャラリーショウの奥のスペースで開催された1週間の展示で発表された、紙をドット状のスクエアに細かく刻んで画面にコラージュ風には貼ってモチーフを表現する作品は、これまでのふわりとした気配から一変しシャープなテイストが創出されていて印象的でしたが、今回の個展ではそのドットの展開がさらに進化した作品群に加え、針で穴をあけてモチーフのの稜線を表現するものや点描の作品など、バラエティに富んだ手法に取り組まれていて、それぞれが生み出す細密表現の面白さに魅せられます。

もっともスタンダードと思われる手法、点描による作品。
律儀なほどに丁寧に、それぞれのモチーフが描き上げられていきます。行為としてもシンプルなだけあってコントロールもしっかりと効いていて、スムーズにその繊細な気配の表出がなされているようにも思えます。しっとりとした大人びた感触に加え、繊細で爽やかな雰囲気が程よく溢れていて心地よく感じられます。


東美貴子_23.JPG

東美貴子_22.JPG 東美貴子_21.JPG

東美貴子_20.JPG



こちらは趣向が凝らされた展開がひときわユニークな作品。
支持体におそらく古びた洋書の4ページ相当にあたる1枚の紙が用いられ、そこに絵を貼り、さらに貼られていないページをその絵に被せて穴で輪郭をトレースしていく、というもの。行為としての無機的な感触が深遠さへと転化し、また表裏両面から開けられる穴がもたらす立体的な表情もそのアプローチのユニークさを際立たせます。


東美貴子_19.JPG

東美貴子_18.JPG

東美貴子_17.JPG



穴による作品はさらに大きなモチーフへと。
捕らえられるモチーフの輪郭がシンプルに穴の羅列によって描き出され、支持体の紙の質感も相まって大きな画面でありながらもどこか軽やかな印象が届けられます。


東美貴子_16.JPG 東美貴子_15.JPG 東美貴子_14.JPG

東美貴子_13.JPG

東美貴子_12.JPG



前回の1週間の個展で発表された細密コラージュによる作品は、その緻密さがさらに追求され、いっそう細やかで繊細な表現が紡ぎ出されています。入り口から向かって正面の壁面に横一列に並べて展示された4点の作品、黄色いドットを多く用いるシンプルな配色で統一され、広めの画面のほぼ中央にさまざまな縮尺のモチーフがドットのコラージュで表現され、インスタレーションのリズミカルな小気味よさも相まって、その面白さがスムーズに届けられます。


東美貴子_11.JPG 東美貴子_10.JPG 東美貴子_09.JPG

東美貴子_08.JPG



刻まれるドットが小さくなったことに唸らされつつ、ただ小さくなっただけではなくそのひとつひとつのドットのかたちの精密さや配列の美しさにも惹かれます。
描き出されているモチーフはむしろ有機的な印象で、それが幾何学的にも思える構造で細やかに構築されていることにも引き込まれます。


東美貴子_07.JPG

東美貴子_06.JPG



ふたつの色彩のドットによる、やや大きめのモチーフが表現された作品も。
ほぼ正方形のドットが全て同じ角度で配列されていることのスマートさがその緻密さや美しさをいっそうシャープに際立たせています。


東美貴子_05.JPG 東美貴子_04.JPG

東美貴子_03.JPG



すこし懐かしくも思える、テキストをグラフィティ調に織り交ぜたちいさな作品もカウンター後方の壁面に。


東美貴子_02.JPG



今回の個展ではひとつの画面にひとつの手法、というシンプルな構成によってそれぞれの作品が制作されていて、バラエティに富んだ展開が繰り広げられていながらも「緻密さ」ということで一貫していて、ひとりのアーティストのクリエイションとしての統一感はしっかりと保たれているように思えます。
そして今後、このさまざまな手法がひとつの画面に収められていくとしたら、またさらにユニークなテクスチャーが生まれるかも、という期待も膨らんでいきます。今後の展開も楽しみです。


東美貴子_01.JPG
posted by makuuchi at 06:26| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月11日

review:TRANS COMPLEX -情報技術時代の絵画- 彦坂敏昭、村山悟郎《4/9、4/28》

review:TRANS COMPLEX -情報技術時代の絵画- 彦坂敏昭、村山悟郎《4/9、4/28》

TRANS COMPLEX -情報技術時代の絵画- 彦坂敏昭村山悟郎
AISHO MIURA ARTS
東京都新宿区住吉町10-10
03-6807-9987
4/9(土)〜5/14(土)日月祝休
12:00〜19:00
彦坂敏昭村山悟郎110409.jpg

TRANS COMPLEX - The painting in the Age of Information Technology - Toshiaki Hikosaka, Goro Murayama
AISHO MIURA ARTS
10-10,Sumiyoshi-cho,Shinjuku-ku,Tokyo
03-6807-9987
4/9(Sat)-5/14(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google translate



京都芸術センターでまず行われ、続いて東京に場所を移して開催の企画。印象として近いスタンスを持つ2人のアーティストをフィーチャーし、空間に提示される互いのクリエイションに備わる独自の視点のユニークさが興味深く思えます。
京都での展示も拝見していますが、もとい観たというよりは充分に時間をかけることが叶わず足を運んだだけといった感じではあるのですが、その短い対峙時間で得た印象としては、それぞれ異なる空間で展示が行われ、互いのクリエイティビティの交流の成果の提示というよりもややアーカイブ的な構成に思えたのですが、今回はひとつの空間に彦坂さんと村山さんの作品が共存し、いわゆる共作ではないものの、空間を共有していることで表出する緊張感や互いの個性の方向性などもよりクリアに提示されているように思えて興味深いです。

1階にはほぼ同じサイズの平面作品、村山さんはひとつの額のなかにふたつのオンペーパーのタブローが並べて収められています。
同じストロークを連ねてリズミカルな構成が展開され、並ぶパターンに共有する構造がそれぞれの筆の動きの差異をむしろ生々しく提示していて、ここで行われたことの「身体的な動き」への想像が強くもたらされる用に思えます。


村山悟郎_19.JPG 村山悟郎_18.JPG 村山悟郎_17.JPG 村山悟郎_16.JPG

村山悟郎_15.JPG



一方、彦坂さんはふたつの額にそれぞれのタブローを収めて展示。お馴染みのストロークによる作品で、それぞれの支持体の色味の違いによってそこに乗せる色彩や質感を変えて展開されていて、白い支持体のものはどこか突き抜けたような空間性が思い起こされるものの、抽象性の高さからかむしろ世界観の極端な違いが感じられないのが隣の村山さんの展開とも相まって面白く思えます。


彦坂敏昭_21.JPG 彦坂敏昭_20.JPG 彦坂敏昭_19.JPG 彦坂敏昭_18.JPG

彦坂敏昭_17.JPG



2階ではそれぞれ独自のシリーズが展開されていきます。

村山さんはまず何やら細かくカラフルな線が交錯する図を掲示、駅名が縦軸にずらりと並び、どんな法則性かは失念してしまったのですがある法則に従ってさまざまな線がその方眼のなかでパターンとなって展開されて、混沌としていながらもリズミカルなイメージが届けられます。この図像の提示が階下の作品でのパターンの展開にも関連しているようにも思えて興味深さも増していきます。


村山悟郎_14.JPG

村山悟郎_13.JPG 村山悟郎_12.JPG

村山悟郎_11.JPG



この階には壁に直接描かれた作品が。
といっても村山さんは鉛筆でうねるような有機的な曲線を描くのみで、そこにまた別のアーティストにトライアングルを組み込むようにしながら色の付いた線を重ねて入れてもらう、というユニークな展開が行われています。先の小さな図での線の交錯が元となっているような感じも伝わり、そこに有機的な感覚が強く注がれることでゆらめくような気配も導き出されているように思えます。


村山悟郎_10.JPG 村山悟郎_09.JPG 村山悟郎_08.JPG <村山悟郎_07.JPG

村山悟郎_06.JPG



線を重ねた方の名前もクレジットされていてそれぞれ異なるのですが、ある具体的なルールがそこにあるせいか、そこに色の付いた線の描き手の個性が強く提示されることはなく、しかししっかりとバリエーションが導き出されていることがまず興味深く思えます。
また村山さんの立体の作品ともイメージのなかで繋がっていきます。立体作品ではやはりその素材感や、三次元で輪郭も強く提示されることで相当なインパクトも創出され、一方でこちらはむしろ儚い感じ、自身の気配をなるべく抑えて空間への作用も弱めつつ、また他の人の手も加わることでなお「個」の存在が希薄になっているのですが、逆にそのことで「像」の本質的なイメージが高い純度で抽出されているようにも感じられます。大胆にピーリングしていってその骨組みの部分だけが現れているような印象も浮かんできた次第です。


村山悟郎_05.JPG 村山悟郎_04.JPG 村山悟郎_03.JPG

村山悟郎_02.JPG




彦坂さんもまたストイックな展開を繰り広げていきます。
まず展示されているのが、ひとつの画面にひたすら方眼を描き込んだ作品、文字通りの「方眼を描く」という行為が提示され、そこに滲み出る手描きによる歪みが協調されています。


彦坂敏昭_16.JPG



モノクロームで統一されたタブロー群。


彦坂敏昭_15.JPG



さまざまな素材を用い、それぞれの質感を重ねて独特のテクスチャーを画面に展開していくお馴染みの質感。当初は家や地図などを元にそれを分解、再構築するような展開だったのが、今回は相当に抽象性が高く、そこから得られる縮尺のイメージもむしろ曖昧でぼんやりとしていて、しかし色調の硬質さ、クールさによって不思議な気配が導き出されているように思えます。


彦坂敏昭_14.JPG 彦坂敏昭_13.JPG 彦坂敏昭_12.JPG

彦坂敏昭_11.JPG



新たな展開として、さまざまなかたちにちぎられたような紙に方眼を描いてそれらをひとつの画面に凝縮したコラージュ的なアプローチの作品も。
こちらも手描きの方眼の、行為の無機質さによってむしろ有機性が強められ、行為の生々しさを強く提示しているように思えます。


彦坂敏昭_10.JPG 彦坂敏昭_09.JPG 彦坂敏昭_08.JPG

彦坂敏昭_07.JPG



イメージの元となったと思われる小さな画面のもの、こちらがなかなか興味深いです。
ある計算式によって創出されるシャープな混沌、緻密なドットの羅列が複雑な構造を構築し、異様なほどに硬質なクールネスがそこから漂ってきます。これまで拝見してきた彦坂さんの作品に一貫して備わる無機質な感触に通じる要素がこの小さな画面に抽出されているような感触もあり、手描きでないことのある意味の難しさがあるものの、この展開もしっかりと観てみたい気がします。


彦坂敏昭_06.JPG 彦坂敏昭_05.JPG

彦坂敏昭_04.JPG 彦坂敏昭_03.JPG

彦坂敏昭_02.JPG



それぞれのクリエイションにおける有機性と幾何学性のバランスが、ひとつの空間に収められることで際立ち、互いに差異はあるもののそこに観る側にとってひとつの展示としての一貫して共有されるイメージがあるように感じられるのが興味深いです。
おそらくは今回でこの企画はひとまずは完結、ということになるのかとは思われるのですが、もう少しこの続きを観たい、彦坂さんと村山さんのクリエイションの本格的な交錯にも接してみたい、という好奇心も湧いてきます。


村山悟郎_01.JPG

彦坂敏昭_01.JPG
posted by makuuchi at 07:53| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。