2011年05月21日

review:福田真規「向こう側のスクリーン」《5/14》

review:福田真規「向こう側のスクリーン」《5/14》

福田真規「向こう側のスクリーン」
YOKOI FINE ART
東京都港区東麻布1-4-3 木内第二ビル6F
03-6276-0603
4/22(金)〜5/21(土)日月祝休
11:00〜19:00
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Maki Fukuda "screen on the other side"
YOKOI FINE ART
1-4-3-6F,Higashi-Azabu,Minato-ku,Tokyo
03-6276-0603
4/22(Fri)-5/21(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google translate



前回の個展も印象的だった福田真規さん。静かな室内を丁寧な描写と巧みな陰影で描き、その空間にひっそりと置かれるデッキチェアなどから漂う残り香がそこに横たわっている悠久の時間のイメージをスムーズに思い起こさせてくれたのですが、今回の個展では全体的な色調こそこれまでの世界観を引き継ぎながらも、眼前に現れる場所は空虚さが淡々と表されている感じで、一旦立ち止まらされた次第。


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画面と対峙している時点で絵のなかの世界にいるとしたら、自分が立っている場所にはむしろ何もない、前回の個展ではあったあたたかな残り香さえもいっそう希薄になってしまっている感覚に包まれます。肌で感じたいぬくもりが遠くなり、淋しさが募っていって、しかしどこへ向かえば良いのか分からないような印象。それでもじっくりとその空間と対峙していると、例えば窓の向こうに建つアパルトメントの窓から覗く暗い部屋、ここから遠い、遮られて見えない場所に人の気配が灯っているようなイメージが静かに湧いてきます。


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開けっ放しの扉。すうっと吸い込まれるような気配が眼前にあって、見える場所には何もなくて、しかし影になって見えない場所に誰かがいるような...。じっくりと絵のなかの空間に身を投じて淀んでもいるような時間の流れに淡々と想像を委ねていると、過ぎ行く時間の向こうに物語がちゃんとあるようなイメージがゆっくりともたらされます。


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カーテン越しに眺める窓の外。その向こうに聳えるマンション、ひとつの部屋だけではなくその建物のなかに灯る数々の営みが、ひとつひとつは小さくてもふわりと灯る明かりの群れになって観る側の脳裏を満たしていくような感じがしてきます。自身がいる場所よりも、さまざまに幾重にも遮られて直接は見えない場所へと想いが向かっていくんです。


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奥のスペースにも同様に淡々とした気配がそれぞれの作品から奏でられます。
作品のサイズの如何を問わず、ただひたすら、視点を置いている自身が立つ場所からは静かに孤独感が届けられ、そして遠い見えない場所に馳せる想いがその作品の物語性を豊かにしてくれます。


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ほぼ全ての作品で、直接は見えないまでも何かしらのかたちでその場所へとどこか繋がっていて気配が通じる印象があるのですが、こちらの扉ががっしりと閉じられた作品の重厚で残酷なほどの遮断との対峙は、いっそうの想像の逞しさを導いてくれます。完全に見えないからこそ、自身が居る空間に時間の流れもひたすらに重くて、しかしそこから感じ取れるスリリングさ、緊張感はいっそう強いものにも思えてきます。


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おそらくはウォームな雰囲気を出そうと思えば直接提示する空間にアンティークな何かを配するだけで充分に演出でき得るような印象なのですが、敢えてそれをせず、遠い場所に気配を潜ませることで鑑賞者側に更なる深みをもたらすように感じられます。ほぼモノトーンに近い印象の暗くて静かな気配がそれぞれの作品から漂い、展示スペースをひっそりとした雰囲気で満たしながら、それらによって紡がれる世界観の表現においては相当にチャレンジングなことが行われているように思え、感じ入る次第です。


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posted by makuuchi at 06:54| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月20日

review:久保俊太郎展覧会「畜生道」《4/28》

review:久保俊太郎展覧会「畜生道」《4/28》

久保俊太郎展覧会「畜生道」
GALLERY TERRA TOKYO
東京都千代田区岩本町2-6-12 曙ビル1F
03-5829-6206
4/23(土)〜5/21(土)日月祝休
11:00〜19:00
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Shuntaro Kubo "Chikusho-do"
GALLERY TERRA TOKYO
東京都千代田区岩本町2-6-12-1F,
03-5829-6206
4/23(Sat)-5/21(Sat) closed on Sunday,Monday,national holiday and 3/28-4/4
11:00-19:00
Google translate



「畜生道」。
展覧会のタイトルに据えられたおそらくは久保さんのオリジナルのこの言葉が、久保さんが作り上げる世界を実にストレートに表しています。
さまざまなサイズの作品で繰り広げられるシュールでグロテスクなユーモア。巧みな筆致でそのひとつひとつのモチーフが丁寧に描かれていることで、登場するキャラクターの存在感はくっきりとした輪郭を放ち、展開される物語に鋭利さ、尖った感触をもたらします。

3点の画面を配してひとつの場面がダイナミックに構築された組み作品。
画面の位置関係がそのまま場面にダイレクトに関わっていてそこから醸し出される面白みにも感じ入りつつ、淀んだ緑という風合いの何とも不思議な色調のなかで繰り広げられる絵巻的な物語の場面のそれぞれに引き込まれ、いやもう何というかどれくらいの感じの距離で接すれば良いか正直なところ分からなかったりもするんですけど(結構絶句寸前のグロさだったりもするもので・・・)、その取り留めのない物語性に一体どうなってどうなるんだろうなどという想像も膨らんでいきます。


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スクエアの画面を菱形に展示した作品、その情景の天地の感覚のズレがそれによってさらに強調されます。ひとつの四角のなかで繰り広げられる場面はこちらも負けず相当にシュール、ほぼ真ん中を横切る地底を挟むふたつの陸地、そこかしこで例によって意志を持った人間の手と小動物たちの戦が繰り広げられていて、その特な活き活きとした感触に何とも不思議なイメージに満たされます。生物の動きの力強さを、そこに咲く菫の花の可憐さ、ほのほのと淡い色彩が繊細な緊張感で静かにやわらかく彩っている風合いにも感じ入ります。


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一部光沢のある素材がコラージュ風に用いられているのが印象的な作品。日本画の画材によるマッドな仕上がりがしっとりとした風合いを醸し出すなか、そのブリリアントさが際立ち、部分としては小さいながらもアクセントとして充分にその機能を果たしているように思えます。


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前回の個展でも発表されていた、ひとつの画面に整然とほぼ同じパターンのキャラクターを並べて描かれた小品も。それぞれの画面で展開されるバリエーションに久保さんの巧みな筆さばきが遺憾なく発揮され、ひときわ淡々とした雰囲気が横たわるなかにさまざまな見所が潜んでいるように思えます。動物たちの有機的な感じは相当にリアルに描写され、一方で纏う鎧や持つ武具はむしろ稜線がくっきりと強調されて、ポップな雰囲気も奏でられます。


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なんとも不思議な雰囲気が空間に充満しています。
日本画出身らしい描写の巧みさは描かれる情景に鋭さをもたらし、グロテスクな手の生物と武具を纏う動物たちそれぞれのどこか感情を失せているような仕草や表情がその緻密な描写によってむしろ存分に引き出され、何だか見えない力に動かされている世界がそこに引き起こされているようなイメージが届けられるように思えます。


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posted by makuuchi at 05:54| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月18日

review:越中正人 "individuals"《4/16、4/21》

review:越中正人 "individuals"《4/16、4/21》

越中正人 "individuals"
nca | niched contemporary art
東京都中央区八丁堀4-3-3-B1
03-3555-2140
4/15(金)〜5/21(土)日月祝休
11:00〜19:00
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Masahito Koshinaka "individuals"
nca | niched contemporary art
4-3-3-B1,Hachobori,Chuo-ku,Tokyo
03-3555-2140
4/15(Fri)-5/21(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00


黒いフレームに収められたふたつの閃光。それぞれ星の瞬きと火の粉という極端に距離の異なる光がひとつの画面に重ねられ、これまでの花のシリーズなどとはまたひと味違うアバンギャルドで熱を帯びた静謐が空間にもたらされ、その重厚さに意識が沈んでいきます。

やや暗めの照明に設定された空間にずらりと並ぶ大判のプリント、そのなかに散りばめられるさまざまな光の情景に、この場所にもたらされる縮尺のイメージが歪められ、何だかミニマルな空間へと誘われていくような錯覚に満たされていきます。


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そもそも飛び散る火の粉にピントを合わせて撮影しようと考えた時点でこの世界観の深みの獲得を決めているようにも思えます。おそらくは凄まじく感覚的に瞬間を捕らえたものと見受けるのですが、火の粉が燃え盛る炎から溢れて散らばる様子を思い浮かべたときの無軌道で無秩序な感触とは裏腹に、瞬間に見せる様子は実に幻想的で、激しい動的な感じは限りなく抑えられ、むしろ浮遊感さえ思い浮かんでくるほどにゆらゆらとゆっくりとした時間がその瞬間に凝縮されて現れているイメージが届きます。


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背景の漆黒の重厚感に、大小さまざまなサイズの赤い球体がその輪郭を際立たせ、また妖しい風合いもいっそう強められます。星空も重ねられているのですが、その青や白の光の研ぎ澄まされたシャープな雰囲気と、火の粉のひたすら暗く深い輝きとがひとつの奥行きのなかに収まって、何とも不思議な空間性が導き出されています。まさにどこまでも続いているような、終わりのない世界がそこに存在しているかのようなイメージに感じ入ります。


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プリントを至近で眺めたときのぼんやりとぼやけた輪郭のなかにさまざまな微妙な表情が生み出されていることにもまた、ぐっと引き込まれます。むしろひたすらにぼやけていて背景の闇との境を判然とさせない様子が妖しさとなって観る側の意識に作用し、実際は火の粉という相当に刹那的な存在であるにも関わらず、生命の神秘を彷彿させるような純度の高い神々しさもそこにあるようなイメージが思い浮かんできたり。。。


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抽象的で無機的な風合いがもたらされることにも惹かれます。
おそらくは撮影してみないとどんな瞬間が捕らえられているか確認できないだろうと思われ、だからこそ相当な回数、シャッターが押されて取り込まれた場面から厳選されたものが作品化されていると推測するのですが、やはりそれだけあって提示される情景には奥行き感であったりはたまた別のイメージとのクロスオーバーをスマートにもたらしてくれたりと、いろんな面白さを提供してくれています。少なくとも僕はここに撮影されているものが火の粉であることは伺うまでは分かっておらず、観たときに「一体なんだろう」という好奇心がその暗い情景に対して湧いてくる感覚がなんともスリリングで、それが火の粉であることを知ったときの衝撃と、驚いたことへの嬉しさもまた痛快だったりします。


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映像も合わせて上映されています。
こちらは分かりやすく星空と炎とを重ねたもので、動きがあるぶんそこに流れる時間のイメージがより具体的に届けられ、展示されている作品への想像のヒントとしても機能しています。やはり炎の動きが実際に提示されるとその重厚な激しさが実感でき、それがそれぞれの写真作品の静謐も際立たせています。


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越中さんのこれまでの花や街並を捕らえて独自の解釈で手を加えて制作された写真作品群は、撮影の手法なども含め、何らかのエフェクトがかけられることで敢えて抽象的な風合いが強く押し出されていたり、巧みにぼやけさせられる輪郭が一方で同時に具体的なイメージを追わせることを促したりと独特の展開を持ち合わせていてそこが魅力に感じられます。しかし今回はむしろ被写体自体は案外ストレートに撮影されていて、そこに起こる偶然性をしっかりと提示することで逆に、考えられないような凛とした緊張感に満ちた深遠な抽象世界となって静かに迫ってくるような印象です。
赤い至近の瞬きは遠くへと連なり、いつしかその奥に輝く星の光を追い越してさらに向こうでその存在を提示しているように思える感じなどもこのシリーズ作品のユニークさをさらに強めています。


越中正人_22.JPG
posted by makuuchi at 08:16| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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