2011年05月03日

review:SPRING GROUP SHOW 稲岡美早子/勝本みつる/牡丹靖佳《3/17》

review:SPRING GROUP SHOW 稲岡美早子/勝本みつる/牡丹靖佳《3/17》

SPRING GROUP SHOW 稲岡美早子/勝本みつる/牡丹靖佳
MA2Gallery
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
03-3444-1133
3/16(水)〜4/10(日)月火祝休
12:00〜19:00
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SPRING GROUP SHOW Misako Inaoka/MItsuru Katsumoto/Yasuyoshi Botan
MA2Gallery
3-3-8,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo
03-3444-1133
3/16(Wed)-4/10(Sun) closed on Monday,Tuesday and national holiday
12:00-19:00
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MA2Galleryで開催されるグループショー、どの展示を拝見しても空間自体に備わるハイソサエティな雰囲気と作品の繊細な風合いとが見事に響き合い、澄んだ洗練された気配と程よい緊張感とが空間を静かに満たしているような印象を持つのですが、今回もその例に漏れず、クオリティの高いインスタレーションが構築されていたように思えます。
アーティストのチョイスもバラエティに富んでいて、しかしそれぞれに内包する深遠なイメージを互いに侵すことなく一定の距離を置いて佇み、そして作品ひとつひとつが醸し出す気配が空間を共にすることで接し合い、展示全体としての緊張感も高め合っている印象。各作品との対峙によって届けられるイメージが連なり、儚さや危うさを伴う世界観が生み出されていくような感覚が得られるのもインスタレーションのナチュラルさと巧みさが成し得るもののように感じられ、興味深く思えた次第です。

僕が記憶する限りでは今回の展示が初見の稲岡美早子さんの作品。
緑に覆われた造形自体は勝本さんの作品の一部の呼応し合い、それが作品同士に自然なつながりをもたらします。
スイッチを入れるともぞもぞと蠢く謎めいた物体、どこかコミカルな感触も醸し出しつつ、植物に包まれる造形はむしろ何らかの生物のイメージが彷彿されます。不思議とかわいらしくも思えてきたりして面白いです。


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1階の入り口から向かって正面、広い壁面には小さな動物のオブジェが壁に設置されて一列に連なって展示。


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そのひとつひとつはさまざまな生物のハイブリッドとなっていて、むしろもとのかたちのかわいらしさが残っていることが逆にグロテスクでシュールな雰囲気を濃厚に醸し出します。
こちらもスイッチを入れると首が左右にもぞもぞと動いたりして、寧ろそれ自体には遊びの感覚からの発想があるようにも思える一方で、どこか奇妙で残酷な、生命のイメージから遠ざけていく不気味で危うげな雰囲気も醸し出されます。


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その小さな作品に紛れて・・・というにはあからさまではありますが、一緒に展示されていた勝本さんの作品。木製のどこか古めかしい戸棚のなかに紡ぎ出されるゆったりとして浮遊感も備わる空間。印刷物のモノクロの風景が淡々とその狭い空間におおらかな奥行きを生み、一方でマリモのようなもりもりとした緑の球体がかわいらしさとともに謎めきをそのなかに灯します。自然な雰囲気とどこか文学的な幻想世界とが響き合い、不思議なイメージへと意識を誘っていきます。


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大阪での個展を終えたばかりの牡丹靖佳さんのペインティング。
独特の風味を保ちながら、今回は牡丹さんの作品としては極めてくっきりとした構造がそこに備わっていて、これまでとはひと味異なるくっきりとした輪郭を伴うイメージが届けられます。ほぼ左右対称、また左右それぞれもまた微妙に対称形に組み上げられた構図に加え、配されるモチーフがほぼ同じ大きさで表現されていることがキャッチーなリズムを生み、また全体に広がるグリーンの大きな色面が、どちらかというと画面の向こうへ、遠くに広がっていくような印象がある牡丹さんのこれまでの展開とは異なり平面的で、寧ろ反対に観る側へと迫ってくるような感じがするのが新鮮で興味深く思えた次第です。


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2階へと続く階段のすぐ手前にも勝本さんの作品。ケースとスプーン。
木製のナチュラルな色調が視覚にやさしく響きます。
箱のなかに巧みにさまざまな要素を配して深い世界観がそこに生み出され、またスプーンはその上にすくわれる栗毛がまるで湯気を立ちのぼらせるかのようで、それぞれ淡々と物語を紡ぎ、しかしそこに程よい重厚さも築かれているような印象です。思い浮かぶ物語の輪郭は寧ろ曖昧なのですが、ただその気配はしっかりと実感できるような感じ、何か現実から遠い世界へと導かれていくような感覚が現れます。


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階段を昇りきった正面には再び牡丹さんのタブロー。
小さな画面は黒で染め上げられ、そこに鉛筆の線によって細やかな風景が描かれています。
鉛筆の鈍い光沢が黒の下地に映え、また互いの重く暗い色調が深い雰囲気をそこにもたらしています。装飾的な描写も丁寧に紡がれながら、一方で牡丹さんの真骨頂とも言えそうな豊かな奥行きがそこに導き出されているのも痛快です。


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2階に展示されていた勝本さんの作品、こちらは白で塗布された箱のなかにまるで間取りのようにその内部が細かく仕切られ、幾何学的な構造の随所にお馴染みの緑の要素や赤ちゃんの靴などの有機的なものを配して、リズミカルさを保ちながら不思議な世界がそこに築かれているような印象です。
溢れる一歩手前を思わせるほどにぎっしりと箱状のものが詰め込まれていて、しかしそれらはどこか、やはりナチュラルな親しみやすい、どこか懐かしいような雰囲気も届けます。またいろんな縮尺の世界が理知的に交錯しているような、何だか小気味よいイメージも浮かんできます。


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稲岡さんは1階の実際に動くものから一転、それ自体にダイナミックな動きのイメージが備わった作品が発表されていて、このスケール感におおいに感じ入った次第。その作り自体は実にシンプル、用いられた素材の質感はむしろくっきりと残されながら、しかし痛快なほどにおおらかな気配がそこから醸し出されていたように思えます。


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炭化したような木片、その有機的な塊に建立されるようにして並ぶ工業製品らしき何か(おそらくは歯の隙間用のハブラシみたいなものかと...)。そしてその先端には3枚の羽根を持つ鳥が群れをなして羽ばたいているような情景が。
この長い構造に備わる動線と、1羽1羽ごとに微妙に羽ばたかせる羽根の表情が異なる小さな鳥の姿が遠い風景のイメージとなって膨らんで、そのおおらかさに包み込まれていくような感覚が湧いてきます。
加えて黒とシルバーという硬質な色彩のチョイス、そのシンプルさにも感じ入ります。互いの色調と造形の質感はかえって反発しあいそうなほどに異なっていながら、むしろ壮大なイメージが力強く引き出し合われているようにも思えます。


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三者の世界観、そしてそれぞれの作品に備わる繊細な気配がぎりぎりの際どさで接し合い、そのことが互いの緊張感を引き立て合って展示全体に深遠さをもたらしていたように思えます。


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posted by makuuchi at 08:55| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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