2011年04月30日

review:山田郁予展「絶対、一生、金輪際」《3/30、4/14》

review:山田郁予展「絶対、一生、金輪際」《3/30、4/14》

山田郁予展「絶対、一生、金輪際」
ミヅマ・アクション
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
03-3793-7931
3/30(水)〜4/30(土)日月祝休
11:00〜19:00
山田郁予110330.jpeg

YAMADA Ikuyo "Never Ever In My Life"
Mizuma Action
1-3-9-2F,Kamimeguro,Meguro-ku,Tokyo
03-3793-7931
3/30(Wed)-4/30(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google translate



山田郁予さんの展示は白金にあった頃の高橋コレクションでも拝見していますが、まず武蔵野美術大学での修了制作展を思い出します。ひとつの空間を丸まった紙やら何やらで埋め尽くしていて相当に凄まじいカオスが溢れ、記憶に残るのは全体的に広がる白のなかにさまざまな色が紛れ込んでいてなんだかもう、作品としての善し悪しの判断より先にインパクトの強烈さにやられてしまったような感じで、充分にじっくりとその展示と対峙しなかったものの、とにもかくにも、といった塩梅で強い印象が残っています。

以降、山田さんの作品を目にするたびにその体験が蘇ってくるのですが、一方でそのなかに潜む脆弱で繊細な風合い、そしてだからこその先鋭的な気配と強靭さなど、さまざまな表情が伺い知れてさまざまな発見がもたらされるのが興味深いです。その都度独創的な世界に意識が包まれ、吸い込まれていくような感覚が湧いてきます。

今回の個展は、展示が始まる前にギャラリーのスタッフの方々から「山田さんがなかに籠って制作、展示を作っている」という旨のお話を伺っていて、その初めて拝見したインスタレーションの再現か、という期待感が浮かんできていたのですが、いざ始まって実際に展示空間に入ってみるとむしろカオスの要素よりも、神々しさが強く伝わる整理され洗練された空間が作り上げられていたことに意外な印象を覚え、そして同時に山田さんが描く世界の芯の部分により深く、スムーズに接していく機会が与えられているように思えるのが興味深いです。


山田郁予_41.JPG



ひとつひとつの作品に空間的な余裕が与えられ、それぞれの気配との対峙がさまざまなイメージを届けてくれます。
画面に溢れるストロークはひたすら身体的でときに痛々しいほどに思えるほどの激しさで抽象的な風合いを備え、しかし広い画面に立ちのぼる気配を俯瞰しているとそこに紡がれる魂がむしろ清々しい気配を纏っているような感覚が膨らんできて、その刹那的な風合いが観る側の意識に清々しく静かな高揚をもたらしてくれます。


山田郁予_40.JPG 山田郁予_39.JPG 山田郁予_38.JPG 山田郁予_37.JPG

山田郁予_36.JPG



ひときわ広い大きな作品に描かれた、セーラー服を身につける女の子。
白地にシルバーで引っ掻くようなストロークがひたすらに綴られ、その風合いの狂おしさがどこか胸を締め付けるような感触が奏でられます。大きく描かれる女の子はどこか愁いを帯びた表情を浮かべ、ふわりとしたショートの髪、僅かにかしげられる小首や細身の腕、つままれるスカートなどがかわいらしい気配も醸し出して、さまざまな感覚が混ざり合い、なんとも不思議な雰囲気をそこに漂わせます。全体的にひときわ白い情景も神々しい印象を強め、裏腹に描かれる女の子自体のイメージのくっきりとした輪郭がその世界観をいっそう奇異なものへと押し上げているようにも思えます。


山田郁予_35.JPG 山田郁予_34.JPG 山田郁予_33.JPG

山田郁予_32.JPG 山田郁予_31.JPG 山田郁予_30.JPG

山田郁予_29.JPG



ほぼひとつの色彩で描かれる作品は、支持体の紙の白と用いられる色彩とが繊細な響きをもたらし、その色の感触が描かれる場面への印象に強く作用してきます。
もわもわと湧くように現れる女性のシルエットは緑とも黄色ともつかない独特の色彩で強く濃い存在感を放ち、捕らえきれない近づけそうで近付き難い気配となって迫ります。遠目で眺めたときの湧くような輪郭が蜃気楼のような曖昧さを思い起こさせ、しかし近付くといっそう激しいストロークが凝縮されていることを認識し、部分に焦点を当てたときにそこで行われた行為の痕跡が痛々しいほどに生々しく伝わってきて、さまざまな濃厚なイメージがもたらされてそれに呑み込まれます。


山田郁予_28.JPG 山田郁予_27.JPG 山田郁予_26.JPG

山田郁予_25.JPG 山田郁予_24.JPG 山田郁予_23.JPG

山田郁予_22.JPG



奥のコンパクトなスペースでもバラエティに富んだ展開が繰り広げられています。


山田郁予_21.JPG



ひときわ用いられる色彩の数が多く、また画面をストロークがより大きく浸食しているような印象の激しくて沈むような気配を保つ作品。今回の展示ではひとつの画面にひとり、という構成の作品が多いなかで唯一、複数の人物が登場していることもその気配の濃さへと影響し、より深い情景となって現れているように思えます。
まさにとっかえひっかえといった感じでさまざまな色彩が重なり、その衝突が生み出すカオスの凄まじさに圧倒され、しかしそれでも立ちのぼっているどこか神々しく洗練された気配に感じ入ります。これほど激しい痕跡の集積でありながら、その情景に佇む女の子のかわいらしさ、儚げな気配にいとおしさもほのほのと浮かんできます。


山田郁予_20.JPG 山田郁予_19.JPG 山田郁予_18.JPG

山田郁予_17.JPG 山田郁予_16.JPG 山田郁予_15.JPG

山田郁予_14.JPG



また、小品も展示され、ちいさな画面に紡がれる魂のどこか小気味よく軽やかで、そして濃厚で危うい感触に魅せられます。


山田郁予_13.JPG

山田郁予_12.JPG



どこか不安定に佇む女の子。描き手の画面との対峙も身体的な要素が抑えられ、ていねいで細やかな線で繊細にそのシルエットが辿られて、脆くかわいらしい気配を漂わせます。


山田郁予_11.JPG 山田郁予_10.JPG 山田郁予_09.JPG 山田郁予_08.JPG

山田郁予_07.JPG



いっそう具体的に表情も仕草も描かれ、どこかユーモラスにも感じられたり。。。
独特の線の深み、大胆な色のチョイス、散りばめられるラメがガーリーな雰囲気と危うさとをもたらします。


山田郁予_06.JPG 山田郁予_05.JPG 山田郁予_04.JPG 山田郁予_03.JPG

山田郁予_02.JPG



そして、映像作品とインスタレーションがこの展示にある種の異様さをもたらします。強烈な自我を書き留めていった紙が何枚も重ねて貼られて相当に濃厚な気配となって現れ、またその分量にも圧倒されます。
映像に綴られる世界のシュールさが、どこか繊細で神々しい気配を奏でるタブロー群とは逆に振れたようなひたすらユーモラスな時間を提示し、それぞれにぐるりとまわって「危うい」という部分で互いのベクトルが合致し、ここに構築される世界観に強度をもららしているようにも思えます。


山田郁予_42.JPG



天真爛漫さとストイックさとが混在する独特の世界、支持体の紙が圧力で歪むほどにひたすら激しく引っ掻くようなストローク、塗り付けられる色彩が、意外なほどに繊細で神々しささえ感じさせてくれるほどの爽やかな色香を奏でる女性の姿を描き出す・・・このギャップが独創的な世界観を導き出しています。


山田郁予_01.JPG
posted by makuuchi at 07:21| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。