2010年08月14日

review:梅沢和木「美しい画像コア」《7/16、7/24》

review:梅沢和木「美しい画像コア」《7/16、7/24》

梅沢和木「美しい画像コア」
CASHI
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F
03-5825-4703
7/16(金)〜8/14(土)日月祝休
11:00〜19:00

Kazuki UMEZAWA "Beautiful Image Core"
CASHI
2-5-18-1F,Nihonbashi-bakuro-cho,Chuo-ku,Tokyo
7/16(Fri)-8/14(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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CASHIでの梅沢和木さんの個展です。
このところはカオス*ラウンジの一連の活動を通じて梅沢さんのクリエイションを目にすることが多く、その都度独特の「勢い」を感じていたのですが、今回はソロでの作品発表ということで、あらためてその個性に触れられることが楽しみで。

入り口すぐの壁面に展示されている小品。
こういった感じのヴィヴィッドな色彩による濃密な展開が、梅沢さんの真骨頂のひとつのように思えます。
さまざまな画像からの引用が鮮烈な発色のなかに沈み込んでいる感じ、もしくはデジタルの2次元世界を色彩と質感の両面において過剰なテクスチャーが激しく浸食していっているようなイメージが痛快です。


梅沢和木_21.JPG 梅沢和木_20.JPG

梅沢和木_19.JPG



その一方で、一切の加筆が施されないポスター作品も。
このひたすら「詰め込む」といった無茶なアプローチと、僕は詳しくないのですがおそらく個々は設定されているキャラクター性を持つさまざまな画像のモチーフが、その気配を持ち合わせたままに凝縮され、混沌とした雰囲気をもたらしているように思えるのも興味深く、それでいてこれだけの要素を詰め込んでいながらもひとつの構図として安定している感触にも唸らされます。


梅沢和木_18.JPG



圧巻なのは、このギャラリーでもっとも広い壁面を覆い尽くすサイズにプリントされた作品。サイズの大きさがそのまま臨場感となって、めくるめく混沌とした雰囲気を伴って迫り、観る者の意識を呑み込んでいくような錯覚も浮かんできます。


梅沢和木_17.JPG



この展開の作品で僕が惹かれるのは、画像サイズの過剰な拡大によってそれがデジタルデータであることを露にしている部分が散見されるところで、その逆の意味での生々しさ、そのキャラクター性を思えば本来は隠されるべき要素が表出し、量と密度において凄まじい矩形の羅列が展開されているのがとにかく面白いです。

もう随分前に読んだ音楽雑誌の一記事を思い出したのですが、音楽制作におけるサンプリングのテクニックのなかで、ひとつの音をサンプラーに取り込み、それで生成された音をさらにサンプラーに取り込んでいく、これを繰り返していくというのがあって、そうすると最初は滑らかな曲線で表現されていた音の波形がその繰り返しでだんだんとその波形を構成する矩形の密度が粗くなり、それによって音のエッジもいっそう強烈になるらしいそうで、そういったことをこの梅沢さんの作品を眺めていて思い起こされた次第。
細微なモチーフほどむしろそのもとのイメージを保っていて、この作品における面積を大きく占めれば占めるほどに、至近で眺めるとその像の輪郭は粗さを増し、アンドロイドのような無機質な感触を晒していることに惹かれます。混在する縮尺も、過剰に溢れる色彩が導き出すアグレッシブな混沌も、迫ってくるような圧巻の臨場感も、実は全て整然としている要素で構成されているという事実に面白さを感じます(なんとなく本来捉えるべき視点とは異なっているようにも思えるのですが・・・)。


梅沢和木_16.JPG

梅沢和木_15.JPG 梅沢和木_14.JPG 梅沢和木_13.JPG 梅沢和木_12.JPG

梅沢和木_11.JPG



ふたたび、タブロー作品が。
ここで展開されるレイヤー的なアプローチ、絵の具の下に沈む画像の存在のある意味において保たれる冷静と達観、それを覆い尽くし、激しい気配を濃密に展開されるヴィヴィッドな絵の具の生々しさ。凄まじいギャップを伴いながらも渾然一体となって独創的な気配を導き出しているように感じられます。
有無を言わせぬ、刹那的なインパクトに惹かれます。


梅沢和木_10.JPG

梅沢和木_09.JPG 梅沢和木_08.JPG 梅沢和木_07.JPG 梅沢和木_06.JPG

梅沢和木_05.JPG



入り口近くの壁面にはやや趣の異なる作品が展示されていて、詳細は失念してしまったのですが、以前に制作された作品を一つの要素として立体的に取り込んだようで、今のアグレッシブな色彩こそこの時点では影を潜め、また引用されるモチーフも比較的整然と配置されているものの、展開したい世界観に一貫したものを感じ取れるように思えるのが興味深いです。


梅沢和木_04.JPG 梅沢和木_03.JPG

梅沢和木_02.JPG



おそらく、梅沢さんの作品に登場するモチーフなどに対する「基礎知識」的なものを共有できているともっと違う面白さが捉えられるのだろうと想像するのですが、そうでなくても充分に、そのヴィヴィッドでアグレッシブなイメージの広がりと、それらをひとつの作品のなかに落とし込むセンスの鋭さとで展開される世界を楽しめるように思えます。
これからどんな情景が繰り広げられるか、カオス*ラウンジでの活動も含めて楽しみです。


梅沢和木_01.JPG
posted by makuuchi at 13:21| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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