2010年05月18日

review:小沢さかえ個展 亜熱帯劇場《4/23、5/1、5/14》

review:小沢さかえ個展 亜熱帯劇場《4/23、5/1、5/14》

小沢さかえ個展 亜熱帯劇場
@MORI YU GALLERY TOKYO
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第三ビル4F
03-6906-9556
4/23(金)〜5/29(土)日月祝休
12:00〜19:00
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Sakae Ozawa "The Subtropic Theatre"
MORI YU GALLERY TOKYO
3-7-4F,Nishi-Gokencho,Shinjuku-ku,Tokyo
03-6906-9556
4/23(Fri)-5/29(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
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もっと心の深層へと届けられ、広がっていく独創的な世界、そして気配。



MORI YU GALLERY TOKYOでの小沢さかえさんの個展です。

先に開催された「絵画の庭」では、前年までに行なわれた東京と京都とでのふたつの個展で発表された大作を含む、これまでの代表的な作品が纏めて展示され、それが小沢さんの展開のアーカイブ的な構成となっていたように感じられて印象に残っているのですが、それはまたそこまでの展開を一段落とし、新たな展開への宣言のようにも思えて、だから今回の個展はいったいどんな世界が観られるのだろう、と楽しみで。

より鬱蒼とした印象の、または高揚感に溢れるような情景。
それらを表現するのに用いられる、「何色」と断定し難い独特の色彩感は今回ももちろん健在で、それがさらに深まり、スケール感も増したように思えます。


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入り口付近には、比較的小さめの作品が配されて、徐々にその世界へと観る者の意識を誘ってくれます。
自然と戯れる幻想。人間と動物とが自然に共存している様子が創出するファンタジックな気配になんともいえない清々しさを感じ、そして濃い色彩で表現される背景は、それであっても透明感が保たれていて、そこから届けられる独特の空気感からも、不思議な心地よさがもたらされるような気がします。
熊と人とがいっしょにいることも、鮮やかな色彩の炎も、上方からいくつも降下しぶら下がっている謎めく繭のようなものの存在も、不思議と違和感がなく自然にその状況を納得してしまえる、それも何だか不思議に思えたり...。


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筆の運びがダイナミックな動きを描く情景に大胆にもたらす作品も。
特にこちらの作品では、その風合いがより顕著で、瞬きやうねりなどスピード感も動線もバラエティに富んでいて、なおかつそれぞれの色彩のフレッシュな感じやコントラストの激しさなども相まって、さらに登場する女性のなびく髪とダイヤのように輝く目によって、凄まじく動的なイメージをもたらしてくれます。


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大樹を登場させた作品。
用いられるさまざまな色彩は、背景の深く濃い色調に鮮やかに引き立てられています。
どちらかというと重力と反発する方向への広がりを連想させる世界観がまず印象に浮かぶなかにあって、そのどっしりとした真っすぐで堂々とした存在感に圧倒されます。一方で、木に生える葉の様子はひたすらスピンする筆の動きでむくむくと湧くように表現されていて、樹木の堂々とした佇まいとは裏腹に、刹那的なイメージが思い浮かんできます。
その木の下に集まる人々、動物。大樹と人々と動物たちのナチュラルでポジティブな関係性が思い起こされて、さらに細やかな描写もかわいらしい印象があって、何だか嬉しい気分も浮かんできたりするんです。


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昨年の京都での個展で発表されたジャングルの作品は、明るく軽やかな色彩で展開されていてそこからフレッシュな気配がほとばしるように創出され、さまざまな心の動きが思い起こされたのが印象に残っているのですが、それと通じるような情景が描かれた作品も。
青系統の色調の多用が、昨年拝見した作品とは異なるイメージと呼び起こしてくれます。
どこか頼り無さげに、生える木の陰か向こうを覗き込む男の子の後ろ姿。好奇心と心配とが混ざり合っているかのように思えて、この男の子の存在が絵画の世界へと意識が入っていくそのキャッチーなきっかけとなっていて、独特の鬱蒼とした気配にするすると沈み込んでいきます。
独特の幻想的な風合いも楽しいです。画面にはさまざまなストロークが重ねられ、格子状にシンプルに描き上げられる木の葉の様子やバラエティに富む樹皮の質感など、それぞれが醸し出す気配や動きのイメージにも惹かれ、俯瞰とディテールとの両方の視点で物語が広がっていくように思えるのも楽しいです。


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そして今回の個展では、新たなキャラクター的モチーフとして(かどうか...は定かではないですが・・・)多くの作品にトラが登場しています。
この姿がとにかくかっこいいんです。
勇壮さと幻想性とが響き合うその佇まい。加えて表情や姿の描写のリアリティ。情景のファンタジックさと絶妙な距離感と感覚的な関係性とでで調和しているのも興味深いです。


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踊るような筆致が描き出すジャングルの鬱蒼とした雰囲気と、その体躯そのものが動く幻想を思い起こさせるようなトラの姿。そしてその表情の豊かさ。さまざまなギャップと絶妙なバランス感がユニークな気配を導き出しているように思えます。


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さらにポップな雰囲気が表出されたような作品も。
トラの臨場感溢れる堂々とした存在感、そこにこれまでの作品にも登場したような動物たちがかわいらしい表情を浮かべながら佇んで、さらに子どもたちの無垢な笑顔。登場する生命それぞれの関係性は実に謎めき、イージーな筆の運びで軽やかに描かれる景色や、そこにさらに入り込む歪んだ色彩のグラデーションなどが、どこか素朴な感触が満ちるなかにさわさわと落ち着かないような、しかしそれが何となく心地よかったりするような不思議なイメージをもたらしてくれるようにも思えます。


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さまざまなモチーフを描いた小品も。遊び心にも満ち、バラエティに富んだコンパクトな場面がずらりと並ぶ様子に心も躍ります。


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さまざまな場面が届けてくれる豊かな気配感。そのひとつひとつに意識が入り込んで...。
輝くようなポジティブな空気感、どこまでも沈み込んでいくような深い気配。ある一方向への広がりに留まらず、空間的な広がりはもちろん、温度感、空気の濃い薄いの感覚、光量、生命の気配など、さまざまな要素に豊かな振れ幅がもたらされているようにも感じられ、それがそれぞれの作品における物語性をいっそうダイナミックに押し上げているように感じられるのが印象的です。

これまで綴られ、積み上げられてきた小沢さんの世界観は、アーカイブ的な展示を経てもなおそのまま受け継がれ、そしてその地平からさらに先の世界へと突き進んだような...そしてその世界の純度もいっそう増したような印象を覚える次第です。


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posted by makuuchi at 22:44| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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