2010年05月18日

review:漆原夏樹展《5/8》

review:漆原夏樹展《5/8》

漆原夏樹展
ギャラリー広田美術
東京都中央区銀座7-3-1 ぜん屋ビル1階
03-3571-1288
5/8(土)〜5/22(土)日休
11:00〜19:00
漆原夏樹100508.jpg

Natsuki Urushihara exhibition
Gallery Hirota Bijutsu
7-3-1-1F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
5/8(Sat)-5/22(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00
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ギャラリー広田美術での漆原夏樹さんの個展です。

約2年前の個展のときに引き続いて、パンダが登場する岩彩の作品を中心に展示が構成されています。そして描かれる情景はさらにスケール感を増し、よりダイナミックな物語性がそれぞれの作品で展開され、そしてその分だけユーモアも深まったような印象を覚えます。
加えて細やかな描写にもいっそう緻密に紡がれているように思え、岩絵の具を用いた表現としては相当に繊細な風合いにも大いに惹かれます。お馴染みの黄色い渦の艶やかなうねりの美しさ、ぽんぽんと小気味よく咲く花のふっくらと膨らむ表情、また作品によって登場する金泥による輝く粒子など、随所に施される細微な描写からその筆使いの巧みさ、細やかさ、丁寧さがしっかりと伝わってくるようにも思えます。


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異様にリアルに毛並みが描き上げられるパンダ。その生々しさに加え、黒斑のなかに灯る怖さをたたえる目、そして爪もむしろ過剰に鋭く描写されているような感じで、本来パンダが持つ凶暴性、獰猛さがそういった表現から観る者に届けられます。
その一方で、一般に思い浮かぶパンダのかわいらしさ、ひょうきんさがそれぞれの咲く品のシチュエーションに織り込まれ、楽しいイメージもそこから醸し出されます。


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そのパンダを登場させて、風神雷神を描いた作品は圧巻です。
大きな画面を左右に配し、それぞれに風と雷とがパンダがいる情景に描かれ、独特の痛快さが生み出されます。
まずそれぞれの画面に登場するパンダの素朴で無垢な佇まいに和まされます。そこからさらに右側の竜巻に巻き込まれるたくさんの樹木、その鮮やかさは至近で眺めるとさまざまな色彩の細かいドットが凝縮されていて見応えがあり、一方で左側の雷、雲の向こうにぞわぞわと広がる闇の渋みなど、さまざまな画面の表情がすでにパンダによる風神雷神という時点で充分にユニークでユーモラスであるとことに、さらに豊かなイメージをもたらしてくれているように思えます。


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パンダが登場しない作品では、骸骨を描いたものも。
もとより巧みな表現力で表出される丁寧な陰影が、骸骨に漂う霊的な雰囲気をいっそう深めているように感じられ、またモチーフ自体が備える格好よさも思い起こされます。


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拝見して満足度の高い岩彩表現です。
本来の岩絵の具の美しさも、その細やかな描写によってていねいに引き出され、線などの密度は過剰でありつつも、盛り上げなどはむしろ抑制が利いていて、それが絶妙なバランスを生み出しているようにも思えます。
そして、その過剰な描写はむしろ観る側の好奇心をこれでもかと引きつけ、煽り、その独創的な世界へと誘ってくれるように感じられます。


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posted by makuuchi at 06:05| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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