2011年04月21日

review:柏原由佳展 ―真ん中へ《3/5、3/30》

review:柏原由佳展 ―真ん中へ《3/5、3/30》

柏原由佳展 ―真ん中へ
TKG Contemporary
東京都江東区清澄1-3-2-7F
03-3642-4090
3/5(土)〜4/9(土)日月祝休
12:00〜19:00
柏原由佳110305.jpg

Yuka Kashiharasolo exhibition -Amid-
TKG Contemporary
1-3-2-6F,Kiyosumi,Koto-ku,Tokyo
03-3642-4090
3/5(Sat)-4/9(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google translate



「真ん中へ」。。。
展覧会のタイトルが静かに、重厚に心に響きます。

武蔵野美術大学の学内での卒業修了制作展に初めて足を運んだときにもっとも印象に残った作品のうちのひとつが柏原由佳さんのタブローで、ツールドフランスの一場面を軽やかに描いた大作、日本画でありながらパステルのみを用いて描かれた情景は、そこから溢れる多幸感がなんとも心地よく感じられました。
その直後に開催された個展も拝見することができ、おおらかな作品とともに小品では抑えられた色数と要素の数、沈む色調の静かな情景を目にして、卒業制作とはまた違う一面を垣間みることができたのも、今思い返すと貴重なことだったなぁ、と。

その後ドイツに渡られ、久々に国内で開催された柏原さんの個展。
そこに並んだ作品群は、ドイツ渡航前の個展で拝見した小品で紡がれた世界観が広がっていったような印象があり、そのことが興味深く思えた次第です。

綿布に油絵の具を用いて描かれる、重く暗い景色。
何かを探るように、もがくような筆致が画面に重なり、綿布の細やかな肌理が奏でるやさしく繊細な風合いや、時折顔を覗かせるエキゾチックな描写などさまざまな要素が渾然となり、何とも不思議な気配が醸し出されているように感じられます。


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描かれる情景は淡々としていて、しかしダイナミックなスケール感もそこから力強く醸し出されます。ひとつひとつの作品とじっくりと対峙していると、それぞれの景色のどこかに全てを呑み込んでしまうような引力の根源があるように思え、そこからさらに内省的な世界へと誘われていきます。。。


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不思議な縮尺感が折り混ざって独特の奥行きが紡ぎ出されていることにも惹かれます。
用いる色彩が極めて少なく抑えられ、ほぼ黒で描き上げられた作品に重く満ちる表情の豊かさ。綿布に擦れる筆致、ストロークが奏でる気配の流れやそれによって導き出される繊細な濃淡、画面の左下辺りの木々が描き込まれひときわ具象的な要素が集まる部分のエキゾチシズムとそこにともに描かれる幾何学的なモチーフが放つシャープなアクセント。遠くへと続くその風景を、むしろぐっと手前にせり出すような上方の抽象的な描写が抱くような感覚が浮かんできて、また曖昧な描写はそれぞれが無限の不思議な奥行きを生んで、そのひたすらに広がる緩やかなうねりに意識が包まれ、深遠な気配へと呑み込まれていきます。


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長くこの空間にいると、それぞれの作品に生み出されている引力の存在をいよいよすんなりと捕らえ、そこへ自然と意識も流れ込んでいきます。
ふわりと淡いテクスチャーで、それでも探るように紡ぎ出される情景はひたすらに繊細で滋味に満ち、しかしスケール感の重厚さが畏怖をそこにもたらして、さまざまな想いを呼び起こしてくれます。


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自身の本質というか、さまざまな体験やそれに伴ってよぎった想いによって柏原さんご自身の内面がどういう世界になっているか・・・全てを受け止め、内から湧く声に耳を傾け、真摯に描き上げられた作品群は、全体的にぼんやりとした印象とそこに紡がれるさまざまな細やかな表情や、大胆な縮尺の混在とダイナミックな奥行き感などがひとつの情景のなかで響き合い、そしてそれぞれの要素が互いに衝突や浸食を生み、重厚で深遠な世界観となって静かに迫ってきます。
柏原さんから伺えたお話の節々からも内面を探っているようなことが散見され、まさに柏原さんご自身の「真ん中」を求め行くような姿勢がそこに現れているようにも思え、そのことにもおおいに感じ入ります。


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描き手の内省に触れて観る側にもたらされるイメージも、それぞれの内面への対峙も促してくれます。悩みとか迷いとか叫びとか祈りとか、さまざまな想いがよぎります。そして今回の柏原さんの作品は、ひたすらに重々しく展開されていつつ、そこかはとなく漂い来るやわらかな気配がそれを静かにやさしく包み込んでくれるようにも思えます。


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posted by makuuchi at 06:05| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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