2011年04月14日

review:夏目麻麦展《3/26》

review:夏目麻麦展《3/26》

夏目麻麦展
ギャラリー椿
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
03-3281-7808
3/26(土)〜4/9(土)日休
11:00〜18:30
夏目麻麦 110326.jpg

Asagi Natume exhibition
Gallery Tsubaki
3-3-10-1F,Kyobashi,Chuo-ku,Tokyo
03-3281-7808
3/26(Sat)-4/9(Sat) closed on Sunday
11:00-18:30
Google translate



さらに広がり深まっていく曖昧な情景。
これまでの肖像の印象からより空間が描かれるようになり、画面から伝わるイメージはより具体的になったのと同時に、だからこそその気配に濃さがもたらされ、いっそう深くへと意識も沈み込んでいきます。

正面の壁面に展示された、ソファに腰掛ける女性を描いた作品。
そこに佇む女性とソファはそれぞれの輪郭が互いに、そしてさらに背景に溶け出すように滲み、ぼんやりとした風合いが妖しげな緊張感を醸し出します。そして正面を見据える女性の顔は、その表情は伺えないながらもどこか呑み込まれるような気配を強く放っています。微睡むような朧げな雰囲気は繊細で緩やか。色合いの大人びた感触も相まって、独特の空気感が音もなく届けられます。


夏目麻麦_28.JPG

夏目麻麦_27.JPG 夏目麻麦_26.JPG 夏目麻麦_25.JPG 夏目麻麦_24.JPG

夏目麻麦_23.JPG



同様のモチーフの小品がずらりと並べて展示されていたのも見応えがありました。
大きな作品でメインのイメージを力強く提示している上で、小さな画面でさまざまな色彩によってバリエーションを展開し、変わらぬ妖しげで深遠な気配とそれぞれの色合いが奏でる温度感の差異、そしてひとつの場面が変わらないかたちで訥々と展開されていることが、長い時空がそこに存在していてそのひたすら淡々とした壮大な世界へと意識を誘ってもくれます。


夏目麻麦_22.JPG

夏目麻麦_21.JPG 夏目麻麦_20.JPG 夏目麻麦_19.JPG 夏目麻麦_18.JPG

夏目麻麦_17.JPG



さまざまな情景が描かれていたのも印象に残ります。それぞれがシーンとしての濃厚なイメージを届け、そこから気配へと意識がさらに深まっていくという。。。
ベッドに腰掛ける女性、そのスレンダーな肢体と長い髪、組んだ脚を床から浮かせてこちらを見据えるようにしてそこにいる感触は何ともやさしい気配を滲ませ、また絵の具の艶やかな質感と緩く紡がれる色面のグラデーションが、曖昧で深遠な世界観をそこに色濃く表し、立ちのぼらせているように思えます。


夏目麻麦_16.JPG 夏目麻麦_15.JPG 夏目麻麦_14.JPG 夏目麻麦_13.JPG

夏目麻麦_12.JPG



駅のホームを思わせる情景。
僅かに風に舞うような髪、動きのある仕草、後ろの椅子などひときわ具体的なイメージが提示されていて、夏目さんの作品としては僕が知る限り極めて輪郭のはっきりとした場面が描き上げられていることに驚かされ、そして引き込まれていきます。
風が吹いている刹那の場面を捕らえて絵におこしたような感じでありながら、それでいてそこにおさめられる時間はもっと長く厚く、さまざまな残り香が漂っているような印象ももたらされ、そういった感触がさらにその気配のイメージを深めてくれます。


夏目麻麦_11.JPG 夏目麻麦_10.JPG 夏目麻麦_09.JPG

夏目麻麦_08.JPG 夏目麻麦_07.JPG 夏目麻麦_06.JPG

夏目麻麦_05.JPG



シンプルに女性の肢体を描いた作品も。
どこか淋しげな気配を漂わせる女性の沈むような姿、その雰囲気は逆に背景の色彩感を際立たせます。床も壁もひとつの色で描かれた空間、その色彩に消え入るような女性の存在は、その悲しげな感情を言葉もなく、背景に広がる色彩によって表しているように感じられます。


夏目麻麦_04.JPG

夏目麻麦_03.JPG



奥まった一角に濃く重い色彩の作品。
暗い色調がそこに入るはずの人物の姿をも呑み込んでいるような感じで、いっそう深い雰囲気がそこにもたらされ、比較的小さめの画面でありながらもそこから醸し出される重厚さに圧倒されます。


夏目麻麦_02.JPG



仕草や表情がさまざまなかたちで提示され、さらにシチュエーションも具体的に描かれていることで、独特のタッチもその豊かさや深みが活きてきて、まさに絵画でないと表出し得ない独創的な雰囲気が紡がれていっているように思えます。
やさしく妖しい気配に意識が包み込まれる感覚が何とも言えず、観賞後の深い心持ちも得難い感覚のようの思えます。


夏目麻麦_01.JPG
posted by makuuchi at 07:41| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:平川恒太 "FOXのちから"《3/24、3/26》

review:平川恒太 "FOXのちから"《3/24、3/26》

平川恒太 "FOXのちから"
Bambinart Gallery
東京都千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331B107
03-6240-1973
3/18(金)〜4/10(日)月火休
11:00〜19:00
平川恒太110318.jpg

Kota Hirakawa "Power of the FOX"
Bambinart Gallery
6-11-14-B107,Soto-Kanda,Chiyoda-ku,Tokyo
03-6240-1973
3/18(Fri)-4/10(Sun) closed on Monday and Tuesday
11:00-19:00
Google translate



個人的なことで恐縮ですが、時が経つのは早いなぁ、と、この平川君の個展を拝見して思った次第です。
彼が大学に入学する直前に知り合ったので4年が経ったのか、と。。。
つまりは彼が学部生の4年間を続けて作品を拝見してきてもいるわけで、こういったかたち、タイミングでひとりのアーティストの変遷に触れることができた(もちろん継続中)ことも貴重に思えます。

で、その都度作品や展示を観てきて、それぞれの機会で目にする世界が異なり、しかもそのひとつひとつが見応えのある水準を超えてきていたことも思い返してあらためて唸らされます。今回の個展ももちろんで、特に驚かされたのは先に発表された卒業制作のインスタレーションが結構なボリュームだったにも関わらず、こちらの展示では全く異なるコンセプトで空間を構成してきていることで、そのバイタリティにも凄みを感じた次第です。

こちらの個展では、「FOX」をキーワードにそれをさまざまな角度から表現し、それぞれやや大きめのドットで描いたペインティングを並べ、コンセプチュアルで理知的な展開が繰り広げられていたのが印象に残っています。


平川恒太_31.JPG 平川恒太_30.JPG 平川恒太_29.JPG

平川恒太_28.JPG



入り口すぐのところに並べて展示されていた、現実とドラマそれぞれでの黒人の米大統領。ドットで描かれていることはテレビ画面を細かく分解するとその集積で画像が構成されていることと繋がっていることを表しているようで、フィクションとノンフィクションの大統領が同じテンションで描かれて並べられると思い返せばオバマ大統領も画像を通じてしか観ていないなあ、ということに気付かされたり。


平川恒太_27.JPG



野生のキツネが罠に捉えられているところを描いた作品(確かクラシックの絵画からの引用だったと記憶しているのですが、どの作品からかを失念。。。)。
大小のドットの連なりや散らばりでその情景が充分なリアリティで描写され、その輪郭が醸し出す臨場感、また配色の巧みさなどによってペインティングとしてのクールさに魅せられます。


平川恒太_26.JPG 平川恒太_25.JPG 平川恒太_24.JPG 平川恒太_23.JPG

平川恒太_22.JPG



さまざまなシーンが次々に展開されていきます。
映像のキャプチャーを彷彿させる作品、画面のなかに映し出される画像、そこに描かれるキノコ雲のアバンギャルドさが、人物の名前のテキストがその下部に併記されていることで妙に客観性が際立たされているように提示されているのが興味深いです。


平川恒太_21.JPG 平川恒太_20.JPG 平川恒太_19.JPG 平川恒太_18.JPG

平川恒太_17.JPG



もっとも大きなサイズの作品は、ポップなモチーフを大胆に挿入しつつ、暗く重たい色彩から醸し出される荘厳さに圧倒されます。
青い目を輝かせるフクロウの妖しげな存在感、ネッシーやアニメキャラクターの引用の小気味よさと裏腹の危うさ、織り込まれる多彩な要素のひとつひとつが何かの暗喩のように感じられ、しっかりと描かれているペインティングとしての力強さに感じ入るのとともに、そこに込められたメッセージ性にもさまざまな想いがもたらされます。


平川恒太_16.JPG 平川恒太_15.JPG 平川恒太_14.JPG

平川恒太_13.JPG 平川恒太_12.JPG 平川恒太_11.JPG

平川恒太_10.JPG



1点だけ、ドットを用いない作品が。
縦に伸びる2本の線は、9.11のテロで破壊されたワールドトレードセンターへの鎮魂を込めて行われた、光となって蘇ったツインタワーとのこと。矩形でシャープに描き上げられるニューヨークの街並の構造としてクールに展開される描写の面白さ、無彩色で構造物や空などが描かれていて、そこに灯る窓明かりの細やかなスクエアの色彩群を際立たせ、そこに走る閃光の鮮やかな青と、天上へと向かうにつれて粒子となって淡く気配に消えていく様子が美しくも切ない気分を届けてくれるように思えます。


平川恒太_09.JPG 平川恒太_08.JPG 平川恒太_07.JPG 平川恒太_06.JPG

平川恒太_05.JPG



ペインティングとともに、額に収められたウェブサイトのページをプリントアウトしたものに重ねてロゴが刷られたものが。
もとのウェブサイトの画像は展示されている作品1点1点と対応していて、それぞれの説明になっているのも面白い展開のように思えた次第です。


平川恒太_04.JPG 平川恒太_03.JPG

平川恒太_02.JPG



絵画としてのクオリティの高さとともに、それを表現することの意味、テーマやコンセプトをしっかりと据えて、程よいユーモアやアイロニーを散りばめながら重厚に展開された世界観に圧倒された次第です。彼がこれからどのように進化し独自のスタイルを築き上げてていくかもホントに楽しみです。


平川恒太_01.JPG
posted by makuuchi at 06:28| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。