2011年04月13日

review:上須元徳展 "RE: Assemble"《3/19》

review:上須元徳展 "RE: Assemble"《3/19》

上須元徳展 "RE: Assemble"
YOD Gallery
大阪府大阪市北区西天満4-9-15 第一神明ビル
06-6364-0775
3/1(火)〜3/26(土)日月祝休
11:00〜19:00
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Motonori Uwasu "RE: Assemble"
YOD Gallery
4-9-15,Nishi-Tenma,Kita-ku,Osaka-shi,Osaka-fu
06-6364-0775
3/1(Tue)-3/26(Sat) closed on Sunday and Monday
11:00-19:00
Google translate



前回拝見したときはさまざまな色彩をふんだんに用い、シャープでどこか幾何学的な印象をもたらす高い写実性を保った情景がポジティブな迫力を伴って描き上げられていたのが強く印象に残っています。そのイメージを持ち続けながら拝見した今回の上須元徳さんの個展、ソロで拝見するのは初めてだったのですが、発表された作品はすべてモノトーンの大作、それによってもとより備わるシャープさやスマートさはさらに力を得て、強烈なほどに無機的な雰囲気がそれぞれの作品から醸し出されていて、その得難い空気感に包み込まれたのがとにかく痛快で。

そもそも僕がモノトーンが好きな傾向だ、というのもあると思いますが、溢れ出る淡々とした沈む気配がクールな雰囲気へと転化、さらにフューチャリスティックな風合いもひときわ強く奏でられていたような印象で、表出される世界にただ感じ入った次第です。


広い画面の正面に堂々と描かれるドーム。構造の無機質な感触が丁寧な描写で表出され、またドームを形成するひとつひとつのプレートの陰影のパターンがバリエーションに富み、そしてそれぞれの緻密さがアバンギャルドな抽象性も放っているように感じられます。
細かいトーンのコントロールで展開されていくドーム表面とは裏腹に、その精緻さを引き立てる背景の過剰なまでに淡々とした感触がギャップをもたらし、ドーム自体のシンプルなかたちとその表面に施される複雑な陰影を鮮烈に引き立てます。


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未来的なドーム建造物、もう1点。
こちらはその表面の陰影は大きく描写され、その膨らむ造形の様子がダイナミックに表現されています。こちらもその向こうに広がる空、横たわる地面の異様なまでに無機質な色彩の広がりが生命の感触とはほど遠い深い静けさを醸し出し、壮大な静寂感、寂寞感が淡々と紡ぎ出されているように感じられるのも印象的です。


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人工的な造形を描く印象が強かった上須さん、その無機質な風合いは無彩色によってストレートに残され、その質感で今度は有機物が描き上げられていきます。
色面に細かく分解していったときに複雑さが際立つその情景は、降るような淡々とした静けさをその画面のなかに横たわらせつつ、それぞれ部分で画面を捉えていくと今度は裏腹に、緻密に細かい色面を組み上げて築かれていく世界のシャープさに感じ入ります。
抑えられた色彩感が有機的なかたちの連続にも整然とした印象をもたらし、それが転化して発せられるリズム感にも好奇心が煽られます。


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淡いグレーを背景に、椰子の葉の複雑な構造が際立ちます。
鋸状に刻まれる葉のエッジ部分、そこに巧みなバランスの無彩色の濃淡で陰影や奥行きが表現され、無彩色の止まった時間の印象とは逆にばさばさと風に煽られて音を立てて靡くようなイメージも浮かんできます。
そしてその椰子の幹のさらに細かく複雑なパターンを繰り出すことで表現されるその粗い樹皮の質感、また地面の凹凸の轟々と爛れ流れてくるような動的な風合いなど、それぞれの部分がいろんな動きや時間の流れを連想させてくれます。得難い迫力がそこから放たれているように思えます。


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板張りの床面に散らばる枯れ葉を描いた作品も、凄まじくクールな気配を醸し出します。
右下から左上へとひたすら無機的に続く板の直線、それが描き出すシャープな気配。リズミカルさは鮮烈を極め、ヴィヴィッドに奏でられるなか、そこ無秩序に散らばる枯れ葉はひとつひとつの造形の複雑さ、葉脈が導く繊細な線、枯れて乾いて思い思いの形状にカールする様子、さらには床面に映り込む影などさまざまな要素が緻密に再現され、そこに深遠に横たわるリアリティとそれに伴う臨場感に静かに圧倒され、また同時に、硬質でストイックな空気感も観る側の感覚を包み込んできます。季節的な印象がもたらす淋しさと、一方でひたすらに無機質な雰囲気が淡々と広がる感触に大いに感じ入ります。


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5つの大きな無彩色の画面に囲まれたときの何とも言えない不思議な充実感、そして随所からシャープに放たれてイマジネーションを刺激してくるクールでスマートな風合い。写実性の高さと構造としての面白さを堪能し、大いに感嘆させられた次第、これからどんな展開が繰り出されるかもさらに楽しみです。
posted by makuuchi at 07:28| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:梶原航平「Wildfire」《3/19》

review:梶原航平「Wildfire」《3/19》

梶原航平「Wildfire」
児玉画廊|京都
京都府京都市南区東九条柳下町67-2
075-693-4075
2/26(土)〜4/2(土)日月祝休
11:00〜19:00
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Kohei Kajihara "Wildfire"
Kodama Gallery,Kyoto
67-2,Higashi-Kujo-Yanaginoshita-cho,Minami-ku, Kyoto-shi,Kyoto-fu
075-693-4075
2/26(Sat)-4/2(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google translate



昨年の個展のインパクトもいまだ覚めやらないなかで開催された梶原航平さんのおよそ1年ぶりの個展。修了制作を踏まえた前回の、大作をずらりと並べひとつの世界観を壮大なスケールで空間を構成したのとは打って変わり、コンパクトな作品をふんだんに織り交ぜてバラエティに富んだ展開がとにかく楽しく、そしてそれぞれのバリエーションに挿入されている、画面のなかで膨張し外へ外へと広がっていく気配が痛快に感じられた次第です。

入り口側にまず展示された2点の肖像画。描き尽くされたシンプルでストレートな主題だからこそ、梶原さんの筆さばきの痛快さ、ケレン味のなさが小気味よく伝わってきます。


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そして独自の世界観へと突入。
ひたすらシュールに、そしてどこかコミカルにさまざまな場面が展開されていきます。太い筆致の重なりが力強さへと転化して、画面から溢れてくるポジティブな勢いに呑み込まれていきます。


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パープルの色彩が印象的な作品群。
この色調は何となく梶原さんらしい印象があって、青などをするりと交えながら深い濃淡で描き上げられる、大胆な陰影で表現されどこかほんのりと透明感も感じられる情景が、アグレッシブさと静けさとが同居するなんとも不思議な深みを伴う気配となって迫ってきます。


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今回の展示でひときわ印象に残った一角、同サイズのモノトーンの作品を整然と並べた壁面。それぞれほぼ同一の構図で制作されていて、それによって統一感とリズムがそこから奏でられます。


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俯瞰したときそれぞれの画面に一貫する奥行き感、それぞれから放たれる気の流れの方向性などに感じ入り、さて近付いて1点ずつをしっかりと観ていくと、全く異なるモチーフと縮尺感が展開されていることに驚き、そして唸らされた次第。
口を結ばれたビニール袋という意表を突くものを描き、しかも意外な構図で画面に捉えた2点は結び目に向かって袋に寄るいくつものシワの陰影が絵の中央に向かって引力を生み、そして水滴が施されたものはさらに異様な混沌がもたらされ、その気配に圧倒されます。


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一方、割れる氷か道路などと思われるものが描かれ、荘厳なスケール感で重厚に迫ってくるモチーフのものは、袋の作品とは一変、そこから得られるイメージも一気にダイナミックに広がっていき、奥へと沈み込む部分の途方もない深みに畏怖すら覚えます。
いずれの作品も、ペインティングの醍醐味と言えそうな絵の具の質感が醸し出す生々しい臨場感がしっかりと放たれ、その魅力にもストレートに引き込まれます。


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小品で展開される遊び心も楽しく、そして痛快です。
さまざまなモチーフが小さな画面に展開され、それぞれの場面の最も濃い気配がしっかりとシャープな輪郭で放たれます。


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さらに、小さな額に収められた作品群も。
こちらでもそのバリエーションの豊かさに唸らされ、そしてそのひとつひとつが醸し出すシュールで濃厚な気配に魅せられていきます。


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小さなキャンバスに乗る絵の具の質感、クラシカルなペインティングの風合いも持ち合わせつつ、フレッシュな感性も溢れます。
それぞれの場面が奏でる雰囲気を刹那的に捉えていくかのように、どことなく速い筆で描かれていったかのような感触もそれぞれの作品のフレッシュな空気感を強めているようにも思えます。


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何となく前回の個展で展開された世界観が引き続いているような雰囲気の作品も。
さまざまな風景が写実的に描き上げられて、そこにおそらくは存在しないシュールで抽象性の高い謎めくモチーフが挿入されて、なんとも奇妙な浮遊感やコミカルな緊張感がそこに生み出されます。


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もりもりと力強くおおらかに乗る筆致、その重なりが導き出す情景やモチーフの立体感や奥行き感。広い情景を描くと壮大、閉じた空間であれば漂う空気感の渦巻く様子が思い浮かんできて、その雰囲気に意識が入り込んでいき、刺激を受けるイマジネーションも相当に膨張していく感覚が楽しいです。


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posted by makuuchi at 06:31| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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