2011年04月09日

review:仙谷朋子「contact #3 dessin de l'air」《2/17、3/5》

review:仙谷朋子「contact #3 dessin de l'air」《2/17、3/5》

仙谷朋子「contact #3 dessin de l'air」
nap gallery
東京都千代田区外神田6-11-14 アーツ千代田3331 209
03-6803-2429
2/16(水)〜4/3(日)月火祝休(3/21開廊)
10:30〜18:30(3/21:〜19:30)
仙谷朋子110216.jpg

Tomoko Sengoku "contact #3 dessin de l'air"
nap gallery
6-11-14-209,Soto-Kanda,Chiyoda-ku,Tokyo
03-6803-2429
2/16(Wed)-4/3(Sun) closed on Monday and national holiday(3/21 is open)
10:30-18:30(3/21:-19:30)
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仙谷朋子さんというとまずセラミックの作品を思い浮かべます。釉薬の艶やかさと泡立ちのかたちを捕らえたような不思議で妖しい造形、それらがひとつの「もの」のなかに封じ込められて、それが空間に作用して独特の気配を漂わせる感じが印象的で、これまで拝見した展示でもその言葉に形容し難い何とも言えない雰囲気に想像が深く包まれていく感覚が、そのお名前を目にするたびに脳裏に蘇ってきます。
しかし今回はセラミックの作品はなくて、版画作品や紐を用いたインスタレーションなど、持ち合わせる世界観がこれまでとはまた異なるアプローチで提示されて、小さな空間をそれぞれの作品の風合いがしっとりと静かに、そして知的に満たしていたような感じがした次第です。

エントランスをくぐってすぐに目にする版画作品。
銅版のちいさなサイズにこうやって泡のようなモチーフが収められると、ミニマムな世界を拡大したかのような、顕微鏡を覗いて見えているような感覚が湧いてきて、それでいて紙にインクの質感がどこか本を読んでいるときに視界が物理的に捕らえている淡々とした光景をも彷彿させてくれて、何とも不思議な気配へと、ある距離を置いた俯瞰したところから意識がするりと流れ込んでいきます。


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フレームに収められ、マット紙も敷かれた奥にひそやかに淡々と提示される有機的な世界。
抽象的でイメージはその輪郭がぼやけて、曖昧な雰囲気がそこから漂ってきます。そこにある情景から視覚で何かを捕らえていくというより、何というか、僕にとっては文章を読んで紡ぎ上げていくのに近いイメージの膨らみ、広がりがもたらされるように思えます。


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ふわりふわりと小さな虚空を浮かび舞うリングはそこから静かで朧げな気配を奏でます。版によって支持体に立ち上がるインクの色合いと質感はきりりとしていて、しかしそれがもたらす気配のイメージの曖昧さ、やさしげな捕らえ難さは、不思議と心地よくその虚空から視界を通じて観る側の脳裏へと漂いながら届けられていきます。


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一転して、支持体に圧力をかけて凹みを生み、それでリング状の抽象的なモチーフを描き出している作品も。
版の作品として共通していながら、白のなかに隠されるモチーフはその気配をいっそう繊細に、臨場感を伴って現され、また何故かしらユーモラスな印象もふわふわと浮かんで、膨らんでいきます。


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三角フラスコと編まれた糸による作品。
フラスコのなかの閉じた空間、コルクの蓋で塞がれた内側と外側とに通じる紐、なかにはくるりと編まれたループがいくつかその空間に漂って、それがフラスコで屈折した光とともに壁に妖しい影を映し出し、なんとも深い神々しい気配をそこに導き出します。
糸を紡ぐ、という行為のひたすらにどこかやさしいイメージが、この壁面の一角にやわらかな雰囲気をもたらしているようにも感じられます。ガラスの硬質な感じと糸のぬくもりとが響き合って奏でられる独創的な静謐に、魔法のように遠い時空へと誘われていくような感覚にも満たされます。


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紐を上方から幾本も吊るしたインスタレーションも。


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白い壁面に浮かぶ淡い糸の白。ほんのりと壁面をグレーに染める糸の影。
それぞれが淡々とした、繊細な気配をそこに導き出します。
繊細な仕事によって紡ぎ上げらた造形の美しさもさることながら、その行為のやさしさ、やわらかさといった要素が得難い美しさや深遠さを生み出しているようにも思え、その気配に静かに引き込まれ、包まれていくような時間が心地よく感じられます。


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垂れ下がって床に静かに横たわる紐も、どこか自然で、その自然さがやさしさやかわいらしさを紡いでいきます。


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セラミックの硬さ、割れるかもしれないという素材の脆さによって生み出される緊張感。それとはまた違って、紐の軟な素材感や版の作品の客観性がこれまでとは異なるかたちでのやさしい静けさが提示されていたように思えます。
もちろん、今回得たイメージはこれまでのセラミック作品での展示と響き合い、繋がって、仙谷さんが紡ぎ出す世界をいっそう深いものへと押し進めていきます。


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posted by makuuchi at 11:40| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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