2011年04月23日

review:重野克明「ローズワールド・色付き」《4/2、4/14》

review:重野克明「ローズワールド・色付き」《4/2、4/14》

重野克明「ローズワールド・色付き」
MEGUMI OGITA GALLERY Showcase
東京都中央区銀座5-4-14-4F
03-3571-9700
3/31(木)〜4/23(土)日月祝休
12:00〜19:00
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Katsuaki Shigeno "Rose World with colors"
MEGUMI OGITA GALLERY Showcase
5-4-14-4F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
03-3571-9700
3/31(Thu)-4/23(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google translate



重野克明さんというと、やはり版画家という印象が浮かんできます。
まずそのお名前を目にするようになったのが銅版画作品での展示で、メゾチントの技法で紡がれ行くその独特の人物の表情が醸し出すレトロ感や緩さ、一方ですうっと引かれる線のひたすらに繊細な風合いや銅版画らしい細い線の密な交錯で施される部分の黒の淡い広がりなど、それぞれに強く深く印象に残っているのも大きな理由のように思えます。
しかし、思い返すと実に多彩なメディアでの展開を最近はなさっていて、初めて油彩の作品を拝見したときのクリーミーな仕上がりも印象的でしたが、むしろそれより最近、墨絵や水彩画など、また油彩で描写される雰囲気にも変化がもたらされ、重野さんが展開されるどこか大正や昭和初期を彷彿させる世界観がより豊かなかたちでその都度提示されるたびに興味深く思い、また想像も深まっていったような気もします。

先に開催された日本橋高島屋美術画廊Xでの個展で発表された、基本的に色のない世界をやや受けるかたちで、今回は展覧会タイトルに敢えて「色付き」という言葉を据えての今回の個展。しかしコンパクトな空間には「色」に拘らず、今の重野さんが表現される緩やかで深い雰囲気を備えるさまざまな味わいを持つ作品が展示されていて、それぞれの情景に備わるユーモアや気配に魅せられた次第です。

ごわついた紙を支持体に採用し、基本的に墨のみで描かれた作品。
わさわさと歪む紙の質感や漂白されてない自然な深みのある色味が重野さんの世界観と合致し、いっそうの深みを醸し出します。
そしてライオンに追いかけられる花嫁は状況を思うと相当に切迫しているはずにもかかわらずどこか追われるほうも追うほうも何故か楽しげで、そののんびりと長閑な感触に和まされます。この紙に額の部分も描かれてしまう遊びの感覚も緩やかに痛快さをもたらします。


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黒縁の額におさめられた絹本水墨の作品。
絹の細かい肌理に染み込む墨の黒が醸し出す繊細で清らかな滲みはそれぞれに深くて暗げな気配を醸し出し、しかし正面に並んで座る男女をはじめ並ぶ人々の表情のどこか明るくてやさしい感じ、テーブルの上に並ぶ数々の料理を思うと厳かながらも相当に賑やかな場面なんだろうなと感じ取れ、この絹本の風合いと墨の滲みが懐かしいような風合いを届けてくれているように思えます。しっとりとした気配がやさしいイメージで心を満たしてくれます。


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そして色のある世界へと。
とたんに重野さんの世界が色香を纏い始めます。
長い板に描かれた作品、丸い輪郭の男性のどこかセンチメンタルな雰囲気をかもす佇まい、纏う衣服の黄色や紫、足下の緑や遠くにもりもりと広がる空と雲、ふわふわ散り散りに虚空を漂うように咲く花の鮮やかさなど、それぞれの色彩が明るく溌剌としていて、それでいてどこかしら古めかしい気配もほのほのと奏でている感触に引き込まれます。
縦長の画面にもたらされるおおらかな奥行きにも魅せられます。


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室内を描いた作品、こちらも重野さんらしい独特の時代性がそこかしこから届けられます。
ひたすらにレトロな豪勢さで飾り付けられた室内。ひとつひとつのものものしさが、逆にユーモラスに感じられたりもして楽しげです。またそれらを描く筆さばきのどこかもりもりと溢れるような感触も印象的で、それが画面にもたらす表情もやはり独特、味わい深さをそこからも届けてくれます。


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楕円形の画面に、こちらは蜜蝋を用いることで得難い風合いを生み出している作品。
より曖昧に、色調やモチーフの輪郭が表出され、記憶の奥に沈む遠い気配の印象がいっそう深められているように思えます。
むしろ粗さを感じさせてくれる画面の質感が謎めいた雰囲気を醸し出し、なんだろう、という興味から緩やかにその気配へと意識が吸い込まれていくような感じです。


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メインの作品であるローズガーデン、紙を1枚ずつ張り合わせて連ねて展開される広々とした光景は、その画面をびっしりと埋め尽くす仄かな赤や緑といった色彩の艶やかさでいっぱいに満たされ、水彩でたわむ紙の風合いやそこかしこに潜むさまざまな要素が古めかしくも洗練された気配をふわりと放ってきます。


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俯瞰しているとそのおおらかな情景に不思議と爽やかな、しかしどこか静かで沈むような心持ちが湧いてきます。
至近でつらつらと眺めていくと、今度はそのなかにおさめられているさまざまな場面がそれぞれにいろんな表情を届け、コミカルでシュール、またほんのり緊張感を世界が奏でてきます。
重野さんがひたすら表現する独特の時代性を彷彿させる世界観がさまざまなかたちで提示され、デジャヴがそこかしこで引き起こされます。所々に唐突に現れる文字が、意味をストレートに伴うことで備わる力で一気に観る側の意識を掴んできたり、はたまたファンタジックで多幸感に満ちた場面がほのぼのとした気持ちを湧かせてくれたりと、連なる場面のひとつひとつがいろんな想いを届けてくれます。


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この作品、畳むと木箱に収まるのだそう。
その箱に施された絵の萌える色彩にも感じ入ります。


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気付くと版画作品がひとつもない重野さんの個展、そのひとつひとつが「版画家」の仕事としての片手間感を漂わせているように思えて、しかしそれが決してネガティブでなく、程良いテンションを紡ぎ出し、その世界をぐっと広げ、深めているように思えます。
気配の淑やかさと色彩の多幸感がなんとも印象的です。

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posted by makuuchi at 08:51| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月21日

review:柏原由佳展 ―真ん中へ《3/5、3/30》

review:柏原由佳展 ―真ん中へ《3/5、3/30》

柏原由佳展 ―真ん中へ
TKG Contemporary
東京都江東区清澄1-3-2-7F
03-3642-4090
3/5(土)〜4/9(土)日月祝休
12:00〜19:00
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Yuka Kashiharasolo exhibition -Amid-
TKG Contemporary
1-3-2-6F,Kiyosumi,Koto-ku,Tokyo
03-3642-4090
3/5(Sat)-4/9(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google translate



「真ん中へ」。。。
展覧会のタイトルが静かに、重厚に心に響きます。

武蔵野美術大学の学内での卒業修了制作展に初めて足を運んだときにもっとも印象に残った作品のうちのひとつが柏原由佳さんのタブローで、ツールドフランスの一場面を軽やかに描いた大作、日本画でありながらパステルのみを用いて描かれた情景は、そこから溢れる多幸感がなんとも心地よく感じられました。
その直後に開催された個展も拝見することができ、おおらかな作品とともに小品では抑えられた色数と要素の数、沈む色調の静かな情景を目にして、卒業制作とはまた違う一面を垣間みることができたのも、今思い返すと貴重なことだったなぁ、と。

その後ドイツに渡られ、久々に国内で開催された柏原さんの個展。
そこに並んだ作品群は、ドイツ渡航前の個展で拝見した小品で紡がれた世界観が広がっていったような印象があり、そのことが興味深く思えた次第です。

綿布に油絵の具を用いて描かれる、重く暗い景色。
何かを探るように、もがくような筆致が画面に重なり、綿布の細やかな肌理が奏でるやさしく繊細な風合いや、時折顔を覗かせるエキゾチックな描写などさまざまな要素が渾然となり、何とも不思議な気配が醸し出されているように感じられます。


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描かれる情景は淡々としていて、しかしダイナミックなスケール感もそこから力強く醸し出されます。ひとつひとつの作品とじっくりと対峙していると、それぞれの景色のどこかに全てを呑み込んでしまうような引力の根源があるように思え、そこからさらに内省的な世界へと誘われていきます。。。


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不思議な縮尺感が折り混ざって独特の奥行きが紡ぎ出されていることにも惹かれます。
用いる色彩が極めて少なく抑えられ、ほぼ黒で描き上げられた作品に重く満ちる表情の豊かさ。綿布に擦れる筆致、ストロークが奏でる気配の流れやそれによって導き出される繊細な濃淡、画面の左下辺りの木々が描き込まれひときわ具象的な要素が集まる部分のエキゾチシズムとそこにともに描かれる幾何学的なモチーフが放つシャープなアクセント。遠くへと続くその風景を、むしろぐっと手前にせり出すような上方の抽象的な描写が抱くような感覚が浮かんできて、また曖昧な描写はそれぞれが無限の不思議な奥行きを生んで、そのひたすらに広がる緩やかなうねりに意識が包まれ、深遠な気配へと呑み込まれていきます。


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長くこの空間にいると、それぞれの作品に生み出されている引力の存在をいよいよすんなりと捕らえ、そこへ自然と意識も流れ込んでいきます。
ふわりと淡いテクスチャーで、それでも探るように紡ぎ出される情景はひたすらに繊細で滋味に満ち、しかしスケール感の重厚さが畏怖をそこにもたらして、さまざまな想いを呼び起こしてくれます。


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自身の本質というか、さまざまな体験やそれに伴ってよぎった想いによって柏原さんご自身の内面がどういう世界になっているか・・・全てを受け止め、内から湧く声に耳を傾け、真摯に描き上げられた作品群は、全体的にぼんやりとした印象とそこに紡がれるさまざまな細やかな表情や、大胆な縮尺の混在とダイナミックな奥行き感などがひとつの情景のなかで響き合い、そしてそれぞれの要素が互いに衝突や浸食を生み、重厚で深遠な世界観となって静かに迫ってきます。
柏原さんから伺えたお話の節々からも内面を探っているようなことが散見され、まさに柏原さんご自身の「真ん中」を求め行くような姿勢がそこに現れているようにも思え、そのことにもおおいに感じ入ります。


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描き手の内省に触れて観る側にもたらされるイメージも、それぞれの内面への対峙も促してくれます。悩みとか迷いとか叫びとか祈りとか、さまざまな想いがよぎります。そして今回の柏原さんの作品は、ひたすらに重々しく展開されていつつ、そこかはとなく漂い来るやわらかな気配がそれを静かにやさしく包み込んでくれるようにも思えます。


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posted by makuuchi at 06:05| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月20日

review:木本圭子個展 dimension rendez-vous《3/24》

review:木本圭子個展 dimension rendez-vous《3/24》

木本圭子個展 dimension rendez-vous
art space kimura ASK?P
東京都中央区京橋3-6-5 木邑ビルB1F
03-5524-0771
3/17(木)〜3/26(土)日休
11:30〜19:00(最終日:〜 17:00)
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Keiko Kimoto solo exhibition "dimension rendez-vous"
art space kimura ASK?P
3-6-5-B1F,Kyobashi,Chuo-ku,Tokyo
03-5524-0771
3/17(Thu)-3/26(Sat) closed on Sunday
11:30-19:00(last day:-17:00)
Google translate



NTT-ICCでのオープンスペースで初めて木本圭子さんのクリエイションに触れたのですが、有機的に散りばめられる微細な粒子が織り成す情景は、ひとつの画面のなかでの密集と拡散とのバランスがなんとも絶妙で、加えて有機的でありながらもそこからそこはかとなく漂い来る緻密な計算に基づいた論理性におおいに魅せられ、そこから得られるイマジネーションの広がりにも感じ入った次第です。またそのときに発表されていた、実にゆっくりと動く映像作品にも、そのときに観た限りでは変化がほぼ分からないにも関わらずそこで起こっている悠久の変容に馳せる想いもまた堪らなかったり。。。

久々に、そしてまさにこういったクリエイションにふさわしい新しくできたこの空間で木本さんの作品を拝見でき、そこで提示されていた情景にもまた唸らされました。
暗闇のなか、細長い台上に置かれるクリスタルのキューブ。ひとつひとつの収まる空間のなかに、粒子が三次元で配置されて、これまでと行われていることは同一線上にあるものの、視覚的にはおおいに異なるアプローチで独自の展開による理知に富んだ世界が繰り出されていました。


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緊張感に満ちた、澄んだ世界がおさめられたキューブ。
細微なドットが形成していく弧は繊細な優雅さを極めます。


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LEDの白い、もしくは青い明かりを当てられて、ちいさな空間に浮かび上がる粒子による理知的な紋様はきらめきも獲得し、これまで思い描くことのなかった新鮮で斬新な美しさをもって迫ってきます。


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これまで平面として、モニターのなかで展開されてきたドットの情景、それをことロールする際に入れ込む遠近感透明のキューブのなかで展開することによって、それらが本来持ち合わせる三次元性を表現することに挑まれた作品なのだそう。木本さんの説明でなるほどと思ったのですが、渡り鳥の群れが飛ぶときに組まれる編隊をさまざまな角度で眺めると見る位置によって見え方が違うのと同じように、この作品でもひとつのドットの配置構造をそれぞれの角度から観ることを可能にすることでその表情の無限さを引き出す、というアプローチにも感嘆。ひとつのキューブを観る面を変えながらしげしげと眺めて、そのなかにあるものは同じであるのに全く異なる情景が実際に現れるのは興味深く、そしてイマジネーションもおおいに刺激してきます。


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奥のスペースでは、映像作品が。
こちらがまた、一度見始めるともう釘付けに。。。

ある計算式に基づいて画面上のドットを動かしていき、そこに引き起こされる動きにぐんぐんと引き込まれ、そして瞬間瞬間に現れるシャープな美しさと優雅さに魅せられます。
白い画面に黒の粒子の群れが蠢く場面では、あたかも水墨画のような渋みも彷彿させるような静寂感が紡がれていきます。ふわりと現れる粒子が画面のなかで漂い、流れて豊かな濃淡がそこに導き出されます。


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一転して黒地に白のシーンでは、映像のなかで展開される情景にいっそうの奥行きが強く感じ取れ、粒子の群れの動きはよりダイナミックな蠢きとなって現れます。
虚空のなかで舞う粒子の群れ、闇に浮かぶ点そのひとつひとつの輝きにも魅せられ、そしてスケール感もよりおおらかに展開されているように思えます。


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すべての情景のまえに計算、理論があり、そこに感覚的な要素は注がれていは入るものの、むしろそれに基づいての有機的な感触がなんとも興味深く、また抽象性に満ちた世界観でありつつ全てが数値に置き換えられる、もとい数値が先にあってそれによって導き出されているものであることに感じ入ります。
叶うものであればひたすらその変化を眺めていたい、そこから得られる知性への刺激と感覚的なイマジネーションに広がりに浸っていたいと思える世界観です。


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posted by makuuchi at 06:33| review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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